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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百二十九 織姫編 「昔よりマシに」

鷲崎わしざきさんから説明を受けた。


昼休み、以前から結人ゆうとくんに突っかかっていたクラスメートの子とケンカになって、相手がハサミを持ち出してそれで結人くんが額を三針縫う怪我をして、その時は額の怪我だけだと思われてたんだけど病院に搬送されてから肋骨にもひびが入ってるっていうのが分かったということだった。


相手の怪我は大したことはなかったそうだ。


結人くんも、大怪我には違いないけど命には別条ないということで僕たちは胸を撫で下ろしていた。特に玲那は、それこそ他人事じゃないから青い顔をしてたし、本当にホッとしたみたいだ。


だけど、この問題はここからが本番だった。


学校は、救急車を呼んだ時、ただの事故だと説明したらしい。しかも、鷲崎さんにも最初は、図工の授業中に結人くんが間違えて自分で傷付けてしまったって説明したんだって。でも病院で応急処置を受けてる時に胸をやけに気にしてる結人くんの様子に異常を察した医師がレントゲンを撮ってみたところ肋骨にひびが入ってることが判明。病院の方から警察に『不審な怪我をした児童が緊急搬送されてきた。虐待ではないか?』と通報が入って、でも怪我をしたのが学校でだと分かって警察が学校に事情を問い合わせてようやくケンカだったと認めたってことだった。


それだけじゃなく、ケンカだったことが分かってからも『ただの悪ふざけが高じたもので、事故のようなもの』と嘘の説明をして、警察を追い返したとまで。


さすがに警察もその説明を鵜呑みにはしなくて結人くんに事情を確認したところ、ただの『悪ふざけ』じゃない、本気のケンカだったことが分かったそうだ。


その話を聞いた時、僕は腹が立ったというより悲しくなった。沙奈子が通ってる学校では、千早ちはやちゃんが沙奈子の作った夏休みの工作を壊してしまったことさえちゃんと教えてくれたよ。それなのにどうして、結人くんが通う学校は、額を三針も縫い、肋骨にひびが入る程の大怪我をした『事件』について誤魔化そうとしたんだ。


話を聞いただけで、結人くんが単に一方的な被害者じゃないことくらいは僕も察したよ。だからこれは『イジメ』じゃないと思う。あくまで双方に非がある『ケンカ』だったんだろうなとは思った。そういう意味では結人くんにも責任はあるんだろうな。


でも、だからこそきちんと事実を告げてしっかりと全容を掴んだ上で関係者それぞれに事情を聞いて対処するべきことだったんじゃないのかな。


僕は、大人のこういうところが嫌いだったし信用できなかったし尊敬できなかったんだ。


沙奈子の通う学校ではそういうのをちゃんとしてくれてたから、昔よりマシになってたんだろうなって思ってたのに……。



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