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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百二十四 織姫編 「みんなで旅館へ」

三月十七日。土曜日。朝、なんだかやけに肌寒くて目が覚めてしまった。明らかに空気が冷たい。沙奈子は僕にぴったりとくっつく感じで寝てたから大丈夫だったみたいだけど、僕は足とかが冷えるのを感じてた。薄手の毛布を掛布団の上に掛けていたのを取ったのがマズかったかな。まさかここまで冷えるとはね。


なんてこともありつつ、今日は星谷ひかりたにさんたちと一緒にあの旅館に行く。早めに掃除や洗濯を済まし、午前の勉強も終わらせた丁度その時、メッセージが入った。『今から出ます』って。


それを受けて僕と沙奈子も部屋を出て、まずは山仁さんの家に向かう。するとみんなが待ってくれてた。


「沙奈~、おはよ~!」


千早ちはやちゃんがテンション高く抱き付いてくる。沙奈子も嬉しそうだった。


「じゃあ、行きますか」


みんなで駅に向かって歩く。旅館まではバスでも結局は乗り換えになるからこっちの方が早いという判断だった。


先頭は星谷さんと波多野さん。次いで千早ちゃんと大希ひろきくんが前、沙奈子が二人の後ろを歩く形でまとまる。僕は沙奈子の後ろで、最後尾はイチコさんと田上たのうえさんだ。集団登校に倣って、基本、二列で歩く。


絵里奈と玲那はちょうど旅館前くらいで合流できるように出発することになってる。


駅についても結構整然とした感じで行動して、電車に乗る。千早ちゃんも悪ふざけをするとかいう感じはない。と言うか、星谷さんに抱き付いてるか、沙奈子に抱き付いてるかって調子で、静かに興奮してるのかな。


こうして見ると本当に普通に人懐っこい可愛い子だよね。気に入らないことがあるとすぐ他人にきつく当たる子だったなんて思えない。


鷲崎わしざきさんのところの結人ゆうとくんや、結人くんに突っかかってるっていうクラスの子もこんな感じになれればいいのになと思ったりもする。


ああでも、男の子はさすがにこの感じにはならないのかな。5年生ともなればそういうのを恥ずかしがったりもするかもしれないし。


だけど、大希くんは男の子でも割とお父さんである山仁やまひとさんにこんな風に抱き付いたりすることもあるらしい。小柄で幼く見えるから違和感がないというのもあるのかもだけど。


大した時間でもないし、全員、立ったままだ。千早ちゃんは星谷さんに、沙奈子は僕に抱き付く形で捉まる。大希くんは波多野さんに手を繋いでもらってた。本当は星谷さんが手を繋ぎたいところなんだろうけど、今はまだ彼女自身が冷静でいられないからなんだろうなとか思ってしまったのだった。



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