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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百十六 織姫編 「寒の戻り」

『子供は意外と狡猾』


星谷ひかりたにさんの言ったそれは、僕自身の実感でもあった。小学校中学校高校と、同級生にもそういうのはいた。裏では陰険で嫌がらせとかしてるのに、教師の前では『良い子』というのが。分かりやすい不良っぽいのは教師に殴られてても、そういうのは逆に贔屓されてたりした。


だから他の生徒が言ってた。


『教師とかって、生徒の裏の顔も見抜けねー無能じゃん。そんな奴を尊敬するとかありえなくない?』


みたいなことを。


当時の僕はそんなことさえどうでもいいと思ってた部分もあったからそこまで気にしたこともなかったけど、今だからこそそう言いたくなる気持ちは分からないでもない。鷲崎わしざきさんの話とかを聞いてると余計に。


沙奈子は、本当にいい学校に行けたんだなとホッとした。それと同時に、結人ゆうとくんは大丈夫なんだろうかと思ってしまったのだった。




三月五日。月曜日。今日は朝から雨だった。アパートを出る時はそれほどでもなかったのに、昼頃からかなり雨が強くなってきた。しかも、退社する時には風も強くてまるで台風だった。


沙奈子のことも心配だったけど、もし何かあれば連絡が入るはずだし、入らないということは無事なんだろうって自分に言い聞かせながら迎えに行った。


「おかえりなさい!」


大希ひろきくんや千早ちはやちゃんと一緒に元気そうないつもと変わらない姿にホッとする。




三月六日。火曜日。ここしばらくすごく暖かかったのに、今日は何だか寒い。寒の戻りってやつなのかな。


「風邪とか気を付けないといけませんね」


絵里奈に言われて「確かに」と応える。沙奈子の服装も気を付けた。温かい恰好で、でももし気温が上がってきたら脱ぐだけで調節できるようにね。




三月七日。水曜日。今日も、朝は割と寒かった。昼以降はそれほどでもなかった気もするけど。


こういう、寒かったり暖かかったりっていう時がむしろ体調を崩しやすいんだろうな。気を付けないと。


でも、沙奈子も絵里奈も玲那も元気だ。それがなにより。




三月八日。木曜日。今日も朝から雨。でも気温は少し暖かいかもしれない。三寒四温とかいうあれになってきてるのかなと思ったりもする。


夜、鷲崎さんとまた話をした。


「まあ何とか無事です。例の子もここのところは大人しくしてるみたいですね。このまま大人しくなってくれたらいいんですけど」


とのことだった。僕もそれを祈りたい。




三月九日。金曜日。朝は割と暖かかった気がするけど、退社する頃にはけっこう寒く感じてしまった。上着を着てこなかったことを後悔するくらいには。これこそ寒の戻りってやつなのか。


だけどやっぱり、山仁さんの家で沙奈子達に出迎えてもらえたら、それだけであったかい気持ちになれたのだった。



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