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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百十四 織姫編 「それで怪我させちゃ」

夜。また鷲崎さんとビデオ通話で話した。


「実は学校で、いつも結人ゆうとに突っかかってくる子が注意を受けたらしいんです。他の子を叩いたということで。実は叩かれた子のお母さんから聞いたんですけどね。もしかしたらこれで大人しくなってくれるかもしれないから、もうしばらく様子を見てみます」


ということだった。


「そっか。これでいい方向に向かってくれたらいいね」


「ホントです。他の子が叩かれるまで放っておくとか怠慢じゃないかなって思いますよ。結人が突っかかられてる時にきちんとしてくれてたら、今回叩かれた子はそんな目に遭わなかったかもしれないのに」


「あ~、それは確かに思うね。子供のケンカとかって何となく微笑ましいものって思ってる人が多そうだけど、実際にはケンカなんかじゃない、ただ一方的に痛めつけてるだけっていうのも多い気がするんだ。そういうのをきちんと見極めてやめさせないと、叩いた方は自分のやってることが許されてるって思ってしまうかもしれないし、叩かれてる方は、そんな暴力を見逃してる大人を信じられなくなってしまうって気もする。


良くないことをした時は、その場できちんと『それは良くないことだ』って言ってあげるのが大人の役目なんじゃないかな。


だけど、だからってスーパーとかで行儀の悪いことをしてる子供相手にいきなり怒鳴ったり叩いたりっていうのも違う気がするけどさ」


僕がそう言うと、絵里奈が頷いてた。


「私も今日見ました。部屋に帰る前にスーパーで買い物したんですけど、そこのエスカレーターで遊んでた子供を、いきなりバーンてはたいたお年寄りがいたんです。それでその子がエスカレーターに倒れ込んでステップで頭切っちゃって救急車と警察が来る騒ぎに。しかもそのお年寄り、怪我させたのに自分はさっさといなくなっちゃって、パトカーがサイレン鳴らして走り回ってました。


確かにエスカレーターで遊ぶと危ないからそれを注意するのは分かりますけど、それで怪我させちゃ本末転倒ですよ」


その絵里奈の言葉に、玲那も、


「あれはびっくりしたよね」


って。そうか。一緒にいたんだな。


すると鷲崎さんも眉を顰めて言った。


「無茶苦茶ですね。だけどきっとそういうのも、『エスカレーターで遊んでたガキが悪い』とか言う人がいるんでしょうね。だからって怪我させていい訳じゃないってことも分からないとか、本当に怖いです」


本当にそう思う。怪我をさせちゃそれはもう手加減してないってことだよ。万が一怪我をさせたらその責任をきちんと負う覚悟もなくて何が手加減だって思うんだ。



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