六百十 織姫編 「対応の違い」
『その子が大希くんや千早ちゃんの学校に転校してきたら、上手くやれると思いますか?』
それは、以前から何となく考えてたことだった。鷲崎さんの話を聞いている限りだと、結人くんが今通っている学校は、沙奈子達や大希くんや千早ちゃんが通っている学校とはどうも対応がかなり違ってる感じがしてたんだ。
鷲崎さんの話だと、結人くんのクラスには、彼に対してやけに敵愾心を抱いてる男の子がいるらしくて何かというと絡んでくるらしい。なのに学校の方は、教師が見かけた時には注意するもののそれ以上には指導しようともせずに、ただ『子供同士のケンカ』として対処もせずにそのままにしてるらしかった。
沙奈子が千早ちゃんにきつく当たられたり、千早ちゃんの度の過ぎたアピールに大希くんが自分の感情を抑えられなくなりそうだった時に、あの子達の学校が取ってくれた対応とはかなり違ってるという印象だった。決して『ただの子供同士のトラブル』と軽んじるんじゃなく、ちゃんとその様子に意識を向けて問題が拗れそうになったら、明らかに適切じゃない行為があったら、その場できちんと指導してくれてたのに。
学校によってそういう対応が違ってしまっているんだとしたら、それはすごく残念なことだと思う。通う学校によってその後の人生まで大きく変わってしまうってことにもなりそうだから。
沙奈子がもし、千早ちゃんにきつく当たられたままで放っておかれたら……。
度の過ぎたアプローチをする千早ちゃんが自分のやり方がマズいということを教えてもらえずにそのまま大希くんにしつこくつきまとっていたら……。
その時には、どんなことになってしまっていたんだろう……?。
千早ちゃんの態度に、沙奈子は『学校に行きたくない…』とまで言い出した。
千早ちゃんのしつこさに大希くんはキレそうになってしまったりもした。
それがそのままにされてたら、沙奈子が不登校になってたり、大希くんが千早ちゃんを殴ってしまったりしてたかもしれない。
そんなことは考えたくもないけど、でも、手をこまねいて見て見ぬふりをしていたら十分に有り得たことじゃないかな。と言うか、今でも起こってる学校内でのイジメとかは、そうやってエスカレートしていったんじゃないのかな。
いつだったか、同級生の女の子にカッターナイフで切りかかった女の子の事件があった。
それって結局、トラブルが小さいうちにちゃんと対処して解決しておかなかったからそうなってしまったんじゃないのかな。
僕は、結人くんと同級生の子との件も、そうならないか心配なんだ。




