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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百九 織姫編 「何気ない予感」

今日は、挨拶程度だけどみんなの顔を見ることができたから、夕方の会合は無しってことになった。


夕方、絵里奈は、秋嶋あきしまさんたちとの『オフ会』を終えた玲那を迎えに行った。そしてそのまま、向こうの部屋に行く。


「沙奈子も楽しかった?」


絵里奈を見送った後、星谷ひかりたにさんたちとのカラオケについてそう尋ねると、沙奈子は「うん」と大きく頷いてくれた。その時の表情も、僕に気を遣ってるものじゃなかったから安心した。ちゃんと楽しめたんだなって。それどころか、


「お父さんも、お母さんとのデート、楽しかった?」


って逆に訊かれてしまった。


その瞬間、顔が熱くなるのを感じつつ、


「うん、楽しかったよ。ありがとう」


と、たぶん真っ赤な顔で笑いかけてた。


そんな僕を、彼女は、ふわっと柔らかい笑顔で見詰めてくれたのだった。




絵里奈と玲那も向こうの部屋に着いて、四人で夕食を終えて寛いでると、鷲崎わしざきさんからメッセージが届いた。


『今、大丈夫でしょうか?』


って。もちろん大丈夫だったからビデオ通話に切り替えて、「こんばんは」と挨拶を交わした。今日は穏やかそうな表情をしてた。


ただ、まさかこの後であんなことになるなんて……。




二月二十五日。日曜日。朝からいつものように四人で朝食を済ませて仕事に行く絵里奈を見送って掃除と洗濯をして沙奈子の午前の勉強を終わらせると、見計らったかのように千早ちはやちゃんたちが来た。


「昨日はありがとうございました」


料理を始めた三人を見守りながら、僕は星谷さんに頭を下げる。


「いえいえ、私の方こそこうして千早と彼のために協力していただいているんですから、このくらいは当然です」


と穏やかに返してくれた。その姿がまた綺麗で驚かされる。いっそう、大人っぽい雰囲気になった気もする。しかも包み込まれるような大きさも感じるんだ。


なんか、本当に気圧されるなあ。


女性として見惚れるって言うより、明らかに人間としての存在感が違うよ。


もっともそれも、僕が彼女のことをよく知ってるからそう思うのかもしれないけどさ。


ただこの時、それはそれとして僕は一つ聞いておきたいことがあった。


「実は、僕の友人の鷲崎さんのことなんだけど…」


そう切り出した僕に星谷さんは、


「沙奈子さんと同じように親に遺棄されたお子さんを預かってらっしゃる方ですね?」


と、僕が聞きたいことを見透かすかのように応えてきた。


そう、僕が聞きたかったのは、まさにそれに関係したことだ。


「もし、その子が大希ひろきくんや千早ちゃんの学校に転校してきたら、上手くやれると思いますか?」



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