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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百三 織姫編 「溶け合う二人」

沙奈子を連れていつものカラオケボックス前に行くと、既にみんなが集まっていた。星谷ひかりたにさんたちも、絵里奈と玲那も。


僕が何も言わなくても沙奈子はすっと絵里奈のところに行って、


「いってらっしゃい…」


って言ってくれた。


『ほらほら、行った行った!』


玲那もそんな風に口を動かしながら、絵里奈の体を軽く押す。


「ごめんなさい。それじゃ沙奈子ちゃんをお願いしますね」


絵里奈は照れくさそうに頬を染めながら星谷さんたちに向かって頭を下げて、僕の方へと歩いてきた。僕も、


「すいません。よろしくお願いします」


と頭を下げた。波多野さんが「まかせて!」って言ってくれて、みんなニコニコ笑ってくれてた。


「いーからいーから、さっさと行け!。時間がないよ」


スマホに繋がったイヤホンから、玲那の声が聞こえる。


沙奈子も僕と絵里奈に向かって手を振ってた。


何だかすごく照れくさいけど、「それじゃあ」ということで僕と絵里奈も手を振りながら歩き出すと、沙奈子と玲那は星谷さんたちと一緒にカラオケボックスへと入っていった。


絵里奈と二人きりになり、少しの間顔を見合わせて、それがまた気恥ずかしくて、ぎこちない感じになってしまった。


黙ったまましばらく歩くと、


「家に、帰りましょう…」


と絵里奈が言った。二人きりでデートしろと言われても、別にどこか行きたいところもなかった。どこかに出掛けるのなら四人一緒がよかったから。


二人きりでなんて言われたら…、もう…、ね。


アパートに帰るなり、お風呂のスイッチを入れて、二人で一緒にシャワーを浴びた。


「デートして来いって言われたのに…、なんか、申し訳ないですね…」


俯きがちで顔を真っ赤にして絵里奈がそう言う。


「ホントだよ…。でも、僕はこうしたかった……」


シャワーに打たれたままで、絵里奈の唇に僕の唇を触れさせていく。


それからはもう、夢中だった。シャワーを浴びたままでも、お湯が溜まると浴槽の中でも、のぼせそうになって裸でお風呂場から二人で出て布団だけ敷いてそこでも。


本当はホテルに行った方がよかったんだと思うけど、ホテルまで行く時間さえ惜しかったんだ。


もしかしたら隣に秋嶋あきしまさんたちがいるかもしれないからと絵里奈はなるべく声を出さないように我慢してて、なのに、


「赤ちゃんほしい…!。いたるさんの赤ちゃん…!」


ってだけは何度も言って、そんな様子がまた可愛くて、僕も自分が自分でなくなるみたいに興奮してた気がする。


昼食も食べずに求め合って、僕たちは溶け合って一つになるような気分に浸ってたのだった。



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