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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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四百三十六 「広がる繋がり」

土曜日。今日は波多野さんの誕生日パーティーだ。会場はイチコさんの時と同じカラオケボックスだった。だから絵里奈と玲那もまた参加することになった。しかもそれに合わせて午後から玲那は秋嶋あきしまさんたちとのオフ会もするんだって。タフだなあ。こういうことに関しては。


「誕生日、おめでとう!」


部屋に入ると、イチコさんの時とは違って、今度は田上たのうえさんが進行役って感じになってた。普段はイチコさんに次いであまり目立つようなことをしない彼女だけど、別に大人しいばっかりじゃないらしい。って、以前にも言ったかな。これは。


千早ちゃんや玲那と三姉妹な感じで波多野さんが二人と仲良くなった今でも波多野さんと仲良しで、デュエット曲とか歌ってた。それを玲那と千早ちゃんが盛り上げる。


今月はもう一回、次はその田上さんの誕生日パーティーもある。やっぱり会場はこのカラオケボックスになる予定だ。こうなってくるとこれがいつものパターンてことになっていくから、本来はあんまりイベントとか馴染めない僕と沙奈子も、それなら参加しやすいな。


実は明日、山仁やまひとさんの誕生日でもあるらしい。ただ、山仁さんはそれこそこういうパーティーが苦手な人だし仕事もあるから、挨拶だけで済ますってことだった。


僕は、沙奈子を膝に抱いた絵里奈と寄り添って座ってて、みんなが楽しんでるのを眺めてる感じかな。星谷ひかりたにさんも僕たちの隣に座って一緒に手拍子とかしながら眺めてた。イチコさんの時もそうだったけど、はしゃぐのはあまり得意じゃないから。それでもちゃんと楽しんでるのは楽しんでるんだ。ノリが波多野さんたちとは少し違うだけで。


その波多野さんは、今回はそれこそ自分が主役だってことで、前回よりさらにノリノリだった。千早ちゃんと玲那もそれに負けじとはしゃいでる。


「ちょっと、カナ!。飛ばしすぎ!。って言うか、服、服!」


はしゃぎすぎて波多野さんのTシャツがまくれ上がってブラジャーまで見えそうになってた。それを田上さんが慌てて直す。役回りとしてはそんな感じなのかな。勢いで突っ走る波多野さんを田上さんがフォローするっていう。千早ちゃんと玲那は一緒になって突っ走ってるだけだから。イチコさんと大希ひろきくんは割とマイペースな感じか。


ピザとドリンクが届いてもそっちのけでアニメソングを歌いまくる波多野さんと千早ちゃんを見てるだけでも僕はお腹いっぱいだった。


この後、山仁さんの家に戻って千早ちゃんの作ったケーキで二次会もすることになるそうだけど、僕と沙奈子と絵里奈はそちらには参加せずに家に帰ることになる。三人でゆっくりする為に。みんなもそれは理解してくれてて、無理に誘ったりはしない。この誕生日パーティーだって、無理に誘われたわけじゃない。僕たちがお祝いしたいから参加したんだ。


それでふと思った。ここに鷲崎さんも参加してたらどうなってたかなって。


もちろん、鷲崎さんは僕の知り合いではあっても今はまだみんなとはほとんど無関係の人だから連れてきたリはしない。でも、僕と同じく虐待を受けてた子を預かって育ててるっていう状況にあるならいずれはこの集まりに加わる可能性もあると思う。もしそうなっても、鷲崎さんなら楽しんでくれそうだなと思った。少なくとも僕よりはこういうの好きそうだし。




お昼過ぎ。終了時間が来て僕たちはカラオケボックスの部屋を出た。波多野さんと千早ちゃんと玲那の三人ははしゃぎすぎで顔が赤い。しかも玲那はこの後、秋嶋さんたちとのオフ会もあるんだよね。大丈夫かなとちょっと心配になる。


まあ、結論から言うとそれは今回も杞憂なんだけど。


店の外で待ち合わせしてた秋嶋さんたちと合流して、玲那はカラオケボックスに戻っていった。ホントに元気だなあ。


帰り道の途中でみんなと別れて、僕と沙奈子と絵里奈はアパートに帰った。


「ねえ、また三人でシャワー浴びますか?」


部屋に入ると絵里奈が聞いてくる。それを断る理由もなかった。沙奈子が期待に満ちた目で僕を見てたし。たまのことだからせっかくの機会は活かしたいもんね。それに、絵里奈と一緒に入っても沙奈子も一緒なら大丈夫っていうのは確認済みだから。


「…やっぱり、こうしていたるさんと沙奈子ちゃんと抱き合ってるのが一番ホッとします……」


シャワーを浴びながら絵里奈がそう呟いた。すると沙奈子がさらにきゅっと抱き付いてくる。絵里奈の言葉に応えてるんだな。もう来年にはこんな風に一緒には入らなくなってるかもしれないけど、だからこそ今を大事にしたい。もしかしたらすごく恥ずかしい過去になるかもしれなくても、それも含めて思い出だから。


シャワーの後でも三人で寄り添い合って寛ぐ。たまにしかできないからすごく癒される実感がある。また一緒に暮らせるようになってこれが当たり前になってしまったら、ここまでの感じじゃなくなってしまうのかな。それはそれでもったいない気もする。


ああでもやっぱり、四人で一緒に暮らしたいな。結局はそれが一番なんだ。


沙奈子の午後の勉強と人形のドレス作りをのんびりとした空気の中で行いつつ、玲那から逐一届くオフ会での楽しそうな様子を僕は堪能してた。ふと見ると、玲那から届いた写真に知らない女性が増えてた。後から聞いた話だと、アパートの住人の一人の『彼女』だってことだった。玲那と親しくすることで女性に慣れた上に自信が付き、大学で同じゼミに通う女性と付き合い始めたらしかった。しかもその女性もアニメ好きで、オフ会に参加することになったんだとか。


すごいな。出会いが人生を大きく変えていくっていうのの典型例の一つなのかもしれない。何しろ、玲那と出会ってなかったら全くそんな気配もなかったらしいから。


こうして、沙奈子のファンだっていう人たちにも新しい出会いが訪れていろんなことが動いていくんだろうな。しかも玲那が送ってきた他の写真では、以前から付き合ってたというアパートの住人の一人と玲那の友達の女の子との新密度がさらに上がってることを窺わせる、完全にイチャイチャしてるカップルにしか見えない様子とかも写ってたりするし。


その人たちが今後結婚したりとか子供ができたりとかあるのかどうかは分からないけど、もしそうなった時にはまた、玲那を通してとかでも何か力になれることもあるかもしれないな。誰だって最初は初心者だし素人なんだから。親だって子供と一緒に成長していくんだから、そのために教わりたいこともあるはずだから。もしそういうのが必要なら、僕も協力したいと思う。玲那のことではお世話になったんだから、その恩も返したいしさ。



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