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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百九十七 沙奈子編 「自分の至らなさを」

『本当はお父さんのことがずっと怖かったんだ……』


沙奈子のその『告白』は、正直言ってハッとさせられるものだった。そんなこともあるかもと覚悟はしてたつもりだったけど、それでもやっぱりちょっと揺さぶられる部分もあった。


だけどそうだよね。僕は決して『完璧な親』なんかじゃなかった。なるべくそれに近付こうと努力はしてたつもりでも、実際には、


『ああすればよかった』


『こうすればよかった』


と考えさせられることばっかりだったしね。だから本当はもっと辛辣な不満を抱いててもおかしくないって思ってたんだ。思うようにしてたんだ。なのに彼女が口にしたのは、


『本当の子供じゃない私のためにどうしてそこまでしてくれるのか分からなくて……』


という不安。しかも、


『本当のことを聞くのが怖くてずっと言えなかった。それを聞こうとしたらお父さんがいなくなってしまうかもしれないって思って』


なんて思わせてしまってたのが、すごく残念だった。自分の至らなさを思い知らされた気分だった。


でも、


『でもちょっと安心したかな。私のためなんじゃなくて自分のために頑張ってくれてたんだったら……』


とも言ってもらえたのは、ホッとした。不安にさせてた上に負担になってたんじゃ、本当になにをしてるのか分からなくなるからね。


世の中には、子供を自分の思うように操ろうとしてきつい物言いをする親もいるけど、スーパーとかに行ったらそれこそ当たり前みたいにそういう光景を見掛けるけど、子供に対してそんな物言いをしてたら、子供もそれを真似して他の誰かに対してそういう物言いをするようになると思わないのかな?ってすごく感じる。


それが嫌だから、沙奈子が他の誰かに対してそんな物言いをするようになるのが嫌だから、僕は丁寧に接するように心掛けてたんだ。注意を促す時にも、『丁寧な言い方』を心掛けてたつもりだった。


『本当の子供じゃない私のためにどうしてそこまでしてくれるのか』と沙奈子は言ってくれたけど、さっきも言ったとおり、結局は『自分のため』なんだよ。沙奈子が誰かに対して高圧的に振る舞ったり、悪態を吐いたり、罵倒したり、ましてや死ぬまで追い詰めようとしたりするのを見たくないから、ただ手本を示そうとしてただけなんだ。


子供にとって親は、途轍もない影響力を持った、きっと他の誰も足元にも及ばないほどの影響力を持った存在だと僕は感じるんだ。親の一挙手一投足が子供にとっては『手本』になるはずなんだよ。


それを忘れないように努めてただけなんだ。



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