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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百九十五 沙奈子編 「朝までだって」

『潰れた方がいい』


そんな風に言われる企業も、珍しくないよね。それこそ日常的に『批判と称する攻撃』を受けてるような企業もいくつもあると思う。こう言われてパッと思い付く企業とか、いくつあるかな?。


だけど実際には、それで本当に潰れたりはしないことも少なくないよね。


結局、実際に企業の存続に直接関われるような立場にならない限りはそんなこともできないんだっていうのが現実なんだろうな、


確かに、『SANA』程度の小さな小さな企業だったら、風評一つで経営が立ち行かなくなることもあるかもしれない。それこそ実際に個人経営の飲食店とかが、悪評を流されたことで閉店に追い込まれた事例だってあったかもしれない。


だけどそれは本当に『正しいこと』なのかな?。大きな力を持つ企業はいくら『批判と称する攻撃』を受けても倒産なんかしなくて、でも、それだけの力を持たない小さな企業は、本当かどうかも定かじゃない悪評を流されただけで倒産に追い込まれたりする。


『強い相手には無力』


で、


『弱い相手を痛めつけてそれで悦に入る』


そんなことが望みなの?。僕は沙奈子や玲緒奈にそんな風になってほしくないんだけどな。そんなことをしてる暇があるのなら、自分の人生と真摯に向き合ってほしいと思う。ましてや自分が上手くいってないからって誰かに八つ当たりするような人になってほしくないんだ。


その上で、もし誰かに当たらずにいられない時には、僕に当たってほしい。僕に対して鬱憤をぶちまけてほしい。沙奈子や玲緒奈にとってそれができる相手でいたいんだ。二人に対して何の責任も負ってない赤の他人にその役目を押し付けるつもりも毛頭ない。


どこかの誰かを死に追いやったり、小さくて非力な企業を倒産に追いやるなんて、そんなことをさせたくない。


親としてそう考えるのは、そんなに不思議なことかな。


自分の子供が誰かを傷付けたり苦しめたり悲しませたりするのは嫌だって考えるのは、そんなにおかしなことかな。


ましてやただ『沙奈子の実の父親に似ていた』だけの山下典膳やまもとてんぜんさんを貶めるようなことをするのを黙って見てるとか、僕の感覚では有り得ないんだけどな。


そんなことをしなくても、僕とこうして話をすることで、全部吐き出してもらえればいいよ。そのためだったらこのまま朝までだって付き合う。たくさんたくさん、話をしたい。


でも、こうして二人で横になって話をし始めてから三時間半が過ぎた頃、さすがに沙奈子の様子が変わってきた気がする。


目がとろんとしてきたんだ。



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