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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百八十 沙奈子編 「抗議の意図も」

千早ちはやちゃんだって、前はすぐ感情的になって乱暴なことをする子だったのに、今はそんなことないよね。そういうことじゃないのかな』


結人ゆうともだよね』


僕たちのその実感通り、千早ちゃんも結人くんも、以前はすごく感情的だったり暴力的だったりしたのに、今ではすっかり変わってしまった。結人くんは今も『とっつきにくい』印象も否めない部分はありつつ、彼をよく知らない人からすると『怖い感じ』もありつつ、『ぶっきらぼう』なところもありつつ、でも実際にはぜんぜん攻撃的だったりはしないんだ。


だから僕は言うんだ。


「普段から攻撃的で暴力的な人について『本当は優しい人だから』みたいなことを言う人もいたりするけど、本当に『優しい人』だったら誰に対しても攻撃的だったり暴力的だったりはしないと思うんだけどな。


要するに『自分に対してだけは都合のいい部分も見せてくれる』だけなのを『優しい』と言い換えてるだけじゃないのかな。そんな気しかしないんだけどな。『自分にだけは優しい』みたいなのは、ちょっと状況が変わったりその人の気分次第で簡単に変わってしまったりするんじゃないのかなって気がする。興味を持ってもらえてる間は『優しく』してくれててもそうじゃなくなったら他の人に対してしてるみたいに攻撃的だったり暴力的になったりするんじゃないのかな。


それどころか、『いわゆるDV加害者が、暴力を振るう一方で優しいような振る舞いをしたりすることもある』みたいなのを『本当は優しいところもある』と言ってるだけじゃないのかな。


そんなのを『優しい』なんて言うのなら、お父さんはやっぱり『優しい』って言葉は信用できないな。それはただ『自分にとって都合がいい』ことを指してるとしか思えない。『優しい人』は『自分にとって都合がいい人』ってだけなんじゃないのかな。


お父さんも、普段から他の人に対しても気遣いはしようと心掛けてるけど、それを『優しさ』だなんて言われたら、『なんか違う』としか思わないんだ」


それに対して沙奈子は、


「だけど私は、お父さんは優しいと思う。こんな優しい人なかなかいないと思うんだよ」


って言ってくれた。ちょっとだけ『抗議』の意図も感じさせるものだとも感じつつ。僕が自分を『優しい人じゃない』みたいに言ってるように感じたからだろうな。そういうところからも、『ニュアンス』というものを伝えることの難しさを感じる。


「ありがとう。沙奈子がそう言ってくれるのは嬉しいよ」



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