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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百五十九 沙奈子編 「本当の気持ち」

そして僕はさらに聞いてみる。


「じゃあ、いつ頃から絵里奈と玲那のことが平気になっていったのかな?」


これについては、


「それは、自分でもよく分からない……」


沙奈子はそう答えた。答えた上で、


「最初に海に行った時は怖かったよ……。お母さんとお姉ちゃんに強引に連れてかれた時は、『助けて!』って思ってた。だけどお父さん、あの時は助けてくれなかったよね」


僕を真っ直ぐに見つめながら言った。だから僕も、


「ごめん。やっぱり助けてほしかったんだね」


また謝罪する。これも数年越しの謝罪だね。


こうやって何年も経ってから『本当の気持ち』みたいなのが分かるというのも、そんなに珍しいことじゃないんだろうな。なにより本人自身が、当時の気持ちを客観的に見られるようになったりして、それで改めて説明できたりするというのもあったりするだろうし。


『当時はこう思ってたけど、実際は』


なんてこともあったりするんじゃないかな。


それでショックを受けたりというのもあったりしても、受け止めなきゃいけないと改めて思う。だって僕はこの子の『親』だから。そして『大人』だから。大人が自分の行いについて責任を負う覚悟を見せないで、どうして子供がそういうのを学べると思うのか、僕には分からない。


『子供のためだから。と親が思ってしてることでも、そんなのは所詮、親の側の自己満足だったり、勝手な期待を押し付けてるだけだったりで、子供の方は迷惑にしか思ってなかった』


というのもよく聞く話だよね。それについても僕は受け止めなきゃいけないと思うし、受け止められてこそ『大人』なんだと思うんだよ。


だから、せっかくこうやって沙奈子が二人きりで話をしてくれてるんだから、この際、彼女の『本音』や『本当の気持ち』についても洗いざらいぶちまけてもらえたらと思った。


今までだってなんでも話してもらえるようにしてたつもりだけど、それが実際にどこまで話してもらえてたのかは、分からないよね。


『なんでも話してもらえてる。と思ってたのは自分の方だけだった』


というのも、ありがちな話だって感じるんだ。


初めて海に行った時に、僕としては良かれと思って、『せっかくの機会だから』と思って、ちょっとくらい強引にされるのもアリなのかなと考えてしまったりしてたけど、やっぱり怖かったのは怖かったんだな。それは分かってるつもりだったというのはあっても、沙奈子自身の口からこうして本音を聞かされると、申し訳なくも感じてしまうよ。


でも、その上で、


「だけど、『怖い人じゃないんだ』ってのは、ちょっとだけ感じたかな」


とも、沙奈子は言ってくれた。



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