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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百五十四 沙奈子編 「前みたいに」

沙奈子がお風呂に入ってる間に、リビングの照明は寝る時のそれにしていた。玲緒奈れおなが寝るとそうしてるんだ。だから、お風呂から上がった沙奈子も驚いた様子もない。


いつものことだからね。


それに僕たちは今でも夜の十時には寝るようにしてる。家族五人で一緒に。リビングにそのまま布団を敷いて。


僕がたまに仕事で遅くまで起きてることもあるだけだ。


だから、今日は少し時間が早いけど、寝る準備に入った。沙奈子がドレス作りもできない状態だし、早々に寝て気持ちを切り替えようということで。


絵里奈と玲那は、帰ってきてから早々にお風呂に入ってる。


そうして四人で布団に横になって、その日あったこととか思ったことを他愛ない感じで話し合って眠りにつくのが日課だった。


それを当たり前のこととしてできるのが僕たち家族だった。決して、


『こうしなきゃいけない』


と決めたわけじゃないんだ。義務にしてるわけでもない。ただ自然とそうできてるだけなんだよ。


意識しなくてもそうしたいと思えるんだ。


だけど今日はさすがに沙奈子は話をする気分にはなれなかったみたいで、黙って横になってただけだった。


それでもいい。無理に話す必要もない。話さなきゃいけないわけじゃないんだから。


でも、しばらくそうしていると、


「お父さん……」


彼女が不意に口を開いた。


寝る時に点けている小さな黄色い明かりの中で、沙奈子は僕を見つめていた。


「どうしたのかな……?」


僕も、囁くみたいな声で応える。


すると彼女は、


「久しぶりにお父さんと二人で一緒に寝たい……。ダメかな……?」


って。


それはまるで小学生の頃に戻ってしまったみたいな、甘えたい時の沙奈子の声だった。


そんな声を聞いてしまったら、是も否もなかった。


しかも、


「いいですね。久しぶりに二人だけで水いらずで」


「うん。こんな時だから思いっきり甘えたらいいと思う」


絵里奈と玲那も、諸手を挙げて賛成してくれた。


だったら僕も、反対する理由もない。


「分かった。一緒に寝よう。前みたいに」


そう応えて起き上がり、沙奈子と一緒に三階に上がった。


そんな僕たちを、絵里奈と玲那が布団に横になったまま笑顔で小さく手を振って見送ってくれる。


玲緒奈のことは二人に任せよう。まだ一歳だった頃には夜泣きもたまにしてた玲緒奈だけど、今はもう大丈夫だから。


途中で目が覚めて、その時たまたまトイレに行ってたりして僕がいなかったら、


「パパ!、パパ!」


って泣いたりもしてたけど、


「ごめんごめん、お父さんはここにいるよ」


言いながら戻った僕にぎゅっと抱きつくなんてことももうなくなってたからね。



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