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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百五十三 沙奈子編 「一緒に入ったら?」

そうなんだ。いくら正式に『SANAの社員』として登用されるのが決まっていても、沙奈子はまだ高校生なんだよ。僕や絵里奈や玲那とは、人生経験が倍ほど違う。何をどう取り繕ってもその事実は動かない。


その沙奈子に『大人』と同じ判断をさせようというのがそもそも『子供じみてる』と思う。未熟だからこそ視野が狭い子供と同じだとしか思えない。


だから今は、とにかくゆっくりしてもらったらいいよ。




そうして結局、十冊ほど絵本を読んだところで、


「玲緒奈、お風呂入ろうか?」


僕が声を掛けると、


「ん……!」


すっくと立ち上がって、僕のところに来てくれた。その時、


「沙奈子ちゃんも久しぶりにパパちゃんと一緒に入ったら?」


って、玲那が。


だけどこれには、


「……ううん、いい。大丈夫」


一瞬、迷ったような様子も見せつつ、沙奈子は頭を横に振った。


玲那としては、


『こんな時だから前みたいにたっぷり甘えたらいい』


という意味での提案だったみたいだけど、さすがにもう一緒に入らなくなってそれなりの期間も過ぎたから、今さら一緒にというのは恥ずかしかったんだろうな。そういう点からも、沙奈子がちゃんと成長してるのが分かる気がする。


正直、『寂しい』と思わなくもないけど、世間一般には、


『高校生で父親と一緒にお風呂に入る。というのもどうかな』


みたいな認識もあるだろうから、それはそれでいいよね。無理に我慢してるような印象も受けなかったし。


だから僕は玲緒奈と一緒にお風呂に入った。


玲緒奈を洗って僕も自分の体を洗って、彼女を抱いてぬるめのお湯に浸かってると、頭がかくんかくんと揺れだした。すごく眠そうだ。


そこでお風呂から上がって体を拭いてあげてても、とろんとした表情で、時々、かくんと膝が落ちそうになって。


「ねんねする?」


僕が尋ねると、


「……」


玲緒奈はこくりと大きく頭を縦に振った。


そして僕に抱かれてお風呂場からリビングに戻った時にはほとんど眠ってしまっていた。


それこそ赤ん坊だった頃には、寝かそうとして布団に下ろすと途端にぐずりだした玲緒奈も、今はもうちゃんと布団に寝てくれる。きっと、僕の膝でなくてもそこまで不安じゃなくなったからだろうな。玲緒奈もちゃんと成長してるんだよ。


すると今度は、入れ替わるようにして沙奈子がお風呂に。僕だけじゃなく、絵里奈や玲那とも、今はもう一緒に入ってない。無理なく一人で入れるようになったんだ。


『普通』に比べればすごくゆっくりだけど、ようやくかもしれないけど。



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