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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百四十八 沙奈子編 「教わる姿勢」

『言葉だけじゃ伝わらない』


そう言いながら、『言葉だけじゃ伝わらない。という事実』を、自分が丁寧に言葉を尽くして『伝わる言葉』を選んで相手に伝えようとする努力をしなかったり、暴力で一方的に相手を従わせようとするための言い訳に使ってる人も、少なくないと思う。


そして同時に、


『相手が丁寧に言葉で伝えようとしてるのを面倒がって耳を傾けようとしない』


という自分の態度を正当化するための言い訳に使ったりということもあるんじゃないかな。僕にはその実感しかないんだよ。


だからこそ僕は、自分はそうじゃないように努力しなきゃと思ってきた。まずは言葉で丁寧に伝えようとして、だけどどうしても伝わらない部分や伝えるのが難しい部分については実際の態度や振る舞いや行動で示すことを心掛けてきた。


自分がそうやって伝えようとしてるのを相手が面倒がって拒絶することもあるのを分かった上で。


『相手の言葉に耳を傾けるのが面倒だから拒絶する』


というのも、あくまでその人自身の選択だから僕がどうこうすることはできないというのを理解するのを心掛けてきた。


そういう僕自身の行いが、今、結果として沙奈子や玲緒奈れおなの振る舞いとして表れてるんだって感じるんだよ。


沙奈子が抱える事情は、玲緒奈には関係ない。


山下典膳やまもとてんぜんさんが沙奈子の実の父親と同姓同名で、見た目もなんとなく似ている』


という事実は、玲緒奈には何の関係もないことなんだ。だからこれは、沙奈子自身が向き合うべき事実でしかない。玲緒奈に押し付けるような話じゃないんだよ。


職場でのストレスを、家族に八つ当たりすることで解消しようとする人には、逆に家庭でのストレスを職場の人に八つ当たりすることで解消しようとする人には、感覚として分からないかもしれないけど、僕たちはそれを理解しなきゃと思ってる。しかもそれが沙奈子や玲緒奈にも伝わりつつあるのを感じる。


『沙奈子が玲緒奈に絵本を読んであげている』


という姿からだけでも、それだけのことが分かるんだよ。


『考える』ということを諦めなければね。


そして『人間を育てる』というのは、そういうものの積み重ねなんだって今なら分かる。自分の都合や要望や要求を一方的に押し付けるだけじゃ、人間は人間として生きていくのは難しいと僕は実感してる。


それを、沙奈子や玲緒奈は教えてくれてる。親として自分の子供から教わってるんだ。そういう、


『教わる姿勢』


をちゃんと態度や振る舞いや行動で示すことも大事だよね。


『言葉だけじゃ伝わらない』


ならさ。



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