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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百三十九 沙奈子編 「一律にどうって」

そういえばイチコさんも、沙奈子と同じように中学生の頃まで、山仁やまひとさんの膝に座ったり一緒にお風呂に入ったりしてたそうだ。


イチコさんの場合は、


『小学校五年生の時に母親を亡くした』


経験があったからだって気がする。沙奈子と違って生まれた時から実の両親にしっかりと受け止めてもらえてた彼女だけど、『母親を亡くした』ことでそれまでのことがある意味ではリセットされてしまったからこそ、そこまで時間が掛かってしまったんじゃないかな。


これもあくまで僕がそう感じてるだけで、そう解釈してるだけで、実際のところは分からないし、それこそ個人差も大きいと思うから、一律にどうって考えられることでもないとは思うけどね。


だから、イチコさんみたいに『母親を亡くす』なんて大変な経験をしてなくても、時間が掛かる子がいても何もおかしくないと感じるんだ。


それを見極められるのは、結局、その子供のことを普段からちゃんと見てる人だけなんじゃないかな。


もちろん、『身近すぎるからこそ見えてない部分』もあるかもしれないとしても、僕が普段から沙奈子のことをちゃんと見るように心掛けてきたからこそ、普段と違う彼女の様子も見て取れるようになったというのは確かにあると思うんだ。


ああでも、それ自体、


『僕にとって都合のいい部分しか見ない』


というのをしてたとしたら、結局、『普段の沙奈子の様子』というのもちゃんと見えてなかったかもしれないけどね。


うん、『都合のいい部分しか見ない』というのは、


『普段の様子をちゃんと見てる』


というのとはまったく違う気がするかな。


そんな風に『自分にとって都合のいい部分しか見ない』というのをしてたんじゃ、本人のことをよく知らなくて先入観なしに見られる他人の方が分かることもあるというのは、あってもおかしくないかもしれない。


だからこそ僕は、自分にとって都合の悪い部分についてもしっかりと受け止めなきゃって思うんだよ。それができなきゃ沙奈子が本当はどういう人なのかなんて見えてこないって思う。


なにしろ、そこまで心掛けてたって、完璧に相手のことを理解できるなんてことはないはずだから。自分以外の誰かが心の中で思ってることなんて、完璧に理解できないはずだから。僕だって、沙奈子が本当はどんな風に思ってるかなんて、実は分かってないと思う。ある程度は想像もできるけど、その想像が正解かどうかは、沙奈子自身にしか分からないよね。


それも分かってないと駄目だって思ってるんだよ。



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