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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百八十八 沙奈子編 「方針として掲げて」

四月二十日。木曜日。曇り。




『面倒だからいいや』


そんな風に思ってしまうのも、人間なら別に珍しいことじゃないと僕も思うし、僕自身、そう考えてやらなかったことなんていくらでもある。


『身だしなみに気を遣って他人からの印象をよくしようと努力する』


なんていうのはその筆頭かな。


取り敢えず、


『あきらかに不潔な状態にして他の人に強い不快感を与えたりしない』


程度のことしか考えてなかったんだよ。TPOと言われることについても、その範囲でしか考えてこなかった。ファッションになんかそれこそ気を遣いたくなんかなかったし、おしゃれにしないことで女性にモテなくたって一向にかまわなかったんだ。それは僕自身の責任であって、僕を選ぼうとしてくれない女性の側に責任があるなんて、考えもしなかった。


望んだ結果が出ることを期待するなら相応の手間と時間とコストをかけて努力する必要があると思うし、相応の手間と時間とコストをかけるのを『面倒だから』『そんなコストかけたくないから』と考えてしたくないなら、相応の結果しか得られないのを覚悟する必要があると思ってる。


結局、仕事もそうだと思う。望んだ結果が出ることを期待するなら相応の手間と時間とコストをかける必要があるはずだし、それをかけずにいい結果を期待するならそんなのはただの『運頼みのギャンブル』だよね。仕事ってそんなことでいいのかな。


それでいいと思ってる人もいるとしても、そんなことに巻き込まれるのは僕は勘弁してほしい。


仕事を教えて一人前になってもらうことを期待するなら相応の手間と時間とコストをかけるのが本来は当たり前だと思うんだよ。それが嫌なら『一か八か』に賭けるしかないはずなんだ。採用された人が、


『一を教えただけで十を正しく理解できる人』


かどうか、『運頼み』『運任せ』で、当たるか外れるかそのスリルを楽しみたいのなら、それを楽しみたい人たちだけで会社を作ればいいと思う。そんなのじゃなくて、堅実に生活を守りたいから仕事をしたい人にとっては、きちんと必要な手間と時間とコストをかけて堅実な運営を心掛けてる会社の方がいいんじゃないかな。


『SANA』は、そういう堅実な運営を心掛ける企業を目指してる。だから従業員についても、きちんと手間と時間とコストをかけて育てていくことを星谷ひかりたにさんも方針として掲げてる。


その一方で、海のものとも山のものともつかない人を一から育てていけるだけの余力はまだないから、最初からある程度は能力が分かってる縁故採用になるだろうけどね。当面は。



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