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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百八十六 沙奈子編 「アルバイト風情」

四月十八日。火曜日。晴れのち曇り。時々雨。




「私は、『SANA』においては、『立場の違いによって優劣がある』という認識は作らないようにしなくちゃと思ってます」


絵里奈がそんなことを口にする。それは、星谷ひかりたにさんとも共有されてる認識だそうだ。『立場の違い』『役割の違い』は優劣で考えることじゃないっていう考えなんだって。


僕も、


「うん、それがいいと思う。『SANA』は確かに沙奈子がいるからこそ存在できてる企業だけど、だからって沙奈子を絶対者のように崇めて、他の人たちは彼女を崇拝するだけの信徒のように考えるのは違うと思うんだ」


って応えさせてもらった。


山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーも、そういう考えで運営されてるそうだ。


山下やまもとは間違いなく優れた才能の持ち主ですが、彼自身は、一般的な社会人としてはむしろ『不適格者』だと私は実感しています。なにしろ彼は、住民票の取り方すら知らないし、電車の乗り方すら知らなかったんですから。彼の能力はドールを生み出すことに特化していて、それ以外についてはまさしく欠格してるんです。彼は、当社の従業員たちの支えがなくては『ドール作家・山下典膳やまもとてんぜん』として存在することすらままならないでしょう。


なるほど当社の従業員たちは、山下やまもとのおかげで今の仕事を得られたのでしょう。ですが、彼ら彼女らの能力があれば、別に他の職場でも十分に力を発揮できます。『山下典膳やまもとてんぜんのギャラリーでなければ働けない』理由はどこにもないんです。担ぐ神輿は山下やまもとでなくていい。それが現実です。それでも、彼ら彼女らは、山下やまもとの下で働きたいと言ってくれているんです。そのことに私は感謝するしかできません」


山下やましたさんは、以前にお話しする機会があった時にきっぱりとそう言い切ってた。他でも働ける人がわざわざ自分たちのところで働いてくれているんだから、それに対して敬意を払うのは当然だと、山下やましたさんは考えてるんだ。そういう意識があるからこそ、山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーで働く人たちも、モチベーションを高く保っていられるというのもあるんだろうな。


『自分は必要とされてる』という実感があるんだと思う。口先だけで『あなたが必要なんです』と言われてるんじゃなくて、感覚としてそれがあるから実感できてるんだろうなって。


しかも、アルバイトという形で働いてる人もいるけど、その人たちについても、お願いした仕事についてはきちんとこなしてもらうことを要求はしつつ、決して『たかがアルバイト風情』だとか思ったりはしてないんだって。



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