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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百六十 沙奈子編 「夢想主義者の戯言」

三月二十三日。木曜日。曇り時々雨。




十五歳以下の子供がいる生活困窮世帯に対して、十五歳以下の子供一人につき十万円の臨時給付金が支給されたらしい。うちにも二歳の玲緒奈れおながいるけど、世帯年収で一千万円を大きく超えているからそれはない。


でも僕はそれについて不満を漏らすつもりはないんだ。不公平かどうかという話についても、僕はそもそも『完全な公平』なんて有り得ないと思うから、世帯年収が一千万円を超えててこれといって苦しいと感じてるわけじゃないうちが対象から外れててもそんなに気にならないんだ。


もちろん、それを気にする人はいるだろうとは思うから、意見を述べるのは自由だと思う。あくまで僕は気にならないというだけで。


ただその一方で、


「うちも琴美ことみに給付金がでたけど、あいつらそれで早速、酒飲んでパチンコ行ってってしてやがった……!」


一真かずまくんが心底忌々し気にそう口にしてた。


「ああ……」


「だろうな」


千早ちはやちゃんは苦笑いを浮かべて、結人ゆうとくんは険しい表情で。


「……」


沙奈子も、何と言っていいのか分からないみたいではありつつ、悲しげな表情に。そこに、大希ひろきくんが、


「ホントに、そういう親もいるのに『親は敬え』とかよく言えると思うよね」


って発言する。その上で、


「僕は、お父さんに『子育て下手だよね』みたいに言っちゃったりしたけど、でも、お母さんが死んでからも一人で頑張ってくれてたことには感謝してるんだ。だけど同時に、『なんで僕を生んだんだよ?』って思うこともあるのも本当なんだよ。そこは格好つけても意味ないしさ。だから文句を言いたくなることもある」


とも。すると篠原さんが、


「ヒロくんがそんなこと言うなんて……」


困惑した様子に。大希くんは、普段はあんまりそういう言い方はしないからね。けれど、僕たちはそれを知ってる。彼にだって『親に対する不満』くらいあることをね。そしてその程度のことは、それこそ『当たり前』にあるものだというのも。


山仁やまひとさんは、他人である僕からすると素晴らしい親にも思えるけど、だからといって『完璧』じゃないことも事実だから。そういう点でついつい不満を覚えてしまってもそれ自体が当然だと思う。『何一つ不満を抱くな!』なんて、


『ただの夢想主義者の戯言』


にしか聞こえないんだ。


山仁さんでさえそうなのに、子供に対して出た給付金を自身の遊興費として使い込んでしまうような親に対してさえ『感謝しろ』なんて、現実を見てないとしか言えないんじゃないかな。


だからといって、僕が口出ししたところで聞くような人たちじゃないんだろうけど……。



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