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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百五十九 沙奈子編 「妥協するしかない」

三月二十二日。水曜日。曇り。


今日は春分の日。




沙奈子が沙奈子らしくいるためには、『多様性』というものが認められる必要があると僕は実感してる。彼女の生い立ちやかつての境遇や、『誰から見ても分かりやすい表情ができない』といった諸々の事情を受け入れてもらうには、『多様性を認めてもらう』しかないんだよ。


その現実がある以上、僕は『多様性を認める』という立場を貫くしかない。


ただ同時に、


『すべての人の事情をすべて同時に完全に受け入れることは現実問題として現時点では不可能』


ということも承知してるつもりだから、当然、ある程度の妥協も必要なんだなとは思ってる。沙奈子のことにしても、


『すべての人が完全に彼女の事情を理解してくれるわけじゃない』


って形で妥協するしかないのも分かってる。だから、彼女の事情を理解してくれない人と関わって嫌な思いをした時には、僕がしっかりと労わってストレスを和らげてあげようと思うんだ。


『そういうのを全部、本人だけに任せてしまう』


『自分一人ですべて対処できるのが当たり前』


みたいなことも現実的じゃないのも事実のはずだからね。それができるなら、仕事のストレスを、他の誰か、それこそ家族や赤の他人に八つ当たりすることで解消しようとするような人がこんなにたくさんいるのはおかしいよ。


お酒や煙草でストレスを和らげようとして周囲に迷惑を掛ける人がいるのはおかしいよ。


それは『自分一人ですべて対処できてる』とは言わないはずだし。なにしろ『自分以外の誰かに迷惑を掛けることが前提の対処法』だからね。ましてやネットで誰かを攻撃することで憂さ晴らししようなんて、『憂さ晴らしできる対象がいることが前提の対処法』以外の何だって言うの?。『自分一人ですべて対処できるのが当たり前』なんてどう考えても嘘だよね?。


そういう諸々を、僕は沙奈子や玲緒奈れおなに分かってもらいたい。分かってもらうには、言葉でああしろこうしろと言うだけじゃなく、実際の振る舞いで示していく必要があると思う。それを実践できてない大人が多いから、子供にも伝わらないんだとしか思わないし、何より大人自身が誰かに迷惑を掛けるようなことをしていて、子供に対してどうして範を示すことができると思えるのかが分からない。大人が誰かに迷惑を掛けるようなことをしてるのに子供には『それをするな』とか、どの口が言うんだろうね。


なにより、そうやって誰かに迷惑を掛けるような大人だってかつては子供だったはずで、『他人様に迷惑を掛けるな』と言われてきたはずなのにどうしてそんな大人になっちゃったの?。



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