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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百五十一 沙奈子編 「メンドクサイもんは」

三月十四日。火曜日。晴れ。


今日も朝は寒かったけど、昼には緩んだみたいだ。




明日から金曜日までの三日間、沙奈子たちが通う高校では『自宅学習日』になる。新学期に向けて学校側がいろいろな準備をするための期間らしい。


これも、


「毎日毎日通学すんのはメンドクサイけどさ、でも『学校がない』ってなったらなんか物足りないよね」


千早ちはやちゃんがそんなことを口にする。彼女が今の学校を気に入って好きで通ってるのが分かる。それに対して結人ゆうとくんは、


「そうか?。俺は休めんのは普通に嬉しいけどな」


だって。すると沙奈子が、


「私も、千早と一緒かな。学校は学校で楽しいよ」


と。これに大希ひろきくんも、


「僕もだ。メンドクサイと思う時もあるけど、学校は嫌いじゃないし」


って。そしたら結人くんが、


「別に俺も学校は嫌いってわけじゃねーよ。でもメンドクサイもんはメンドクサイ」


そっぽを向く感じで言った。


こうやって、とても仲が良くて家族みたいにして一緒にいることが苦痛じゃない千早ちゃんたちでさえ、それぞれ違う考え方や感じ方を持ってるのが分かる。血の繋がった肉親でも違ってるのが普通だったりするんだから、それ自体が当たり前のことだよね。


そこに一真かずまくんが、


「俺は結人の気持ちも分かるかな。ただ俺の場合、親が『行きたくないんなら学校なんか行くな!』とか言うし、『行きたくない』とか家じゃ言えないんだよ。学校は好きってわけじゃないけど、今時、高校くらい出ておかないと就職もそれこそ難しそうだしな。千早や沙奈や結人みたいになにか『仕事にできそうな得意なこと』もないし……」


苦笑いを浮かべながら口にする。


確かに、僕は別に学歴だけで人生が決まってしまうとまでは思ってないけど、『学歴フィルターってものはあったとしても不思議じゃない』と思ってるくらいだから、中卒じゃどうしても不利になるくらいのことは分かってるつもりなんだ。一真くんも言うとおり、千早ちゃんや沙奈子や結人くんは、それぞれ『ケーキ作り』『ドールのドレス作り』『ドール用の家具作り』という『秀でた一芸』を持ってる上にそれがもう仕事として成立する目処が立ってるから、ううん、それどころか沙奈子に至ってはもう実際に一人で暮らしていけるほどの実質的な収入にはなってるから、たとえ高校を中退したりして中卒ってなっても大丈夫かもしれなくても、一真くんはそうじゃないからね。


沙奈子も、今の時点ではあくまでアルバイトで、僕の扶養から外れない程度の給料しか出てない形にはなってても、それは絵里奈が名義上『デザイナーSANA』としての給料を受け取ってるからであって、その分はちゃんと沙奈子の口座に入金して残してて、もう大変な預金額になってるんだ。



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