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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百四十七 沙奈子編 「かつてはそれが」

三月十日。金曜日。晴れ。




本当に不思議だよ。


『他人の気持ちが分かる人になりなさい』


『他人の痛みが分かる人になりなさい』


なんて美辞麗句が当たり前のように語られてるのに、実際にはパワハラとかセクハラとかモラハラとかって言葉も当たり前のように生まれてきてしまうような現実が存在するんだからね。


僕が以前勤めていた会社でも、上司による厭味や悪態は日常茶飯事だった。そしてあの頃の僕はそれに対してそんなに違和感も持ってなかった。


『どうせこんなもの』


としか思ってなくて、ただ心を殺して感情をなくして聞き流していただけなんだ。だからあの上司のパワハラは、少なくとも僕に対しては何の意味もなかったと思う。それで僕が反省することもなかったし成長することもなかったんだから。


『厳しくしないと若い世代が育たない』


パワハラを肯定する人たちはそんなことを口にするんだろうけど、パワハラをする人は、相手が『若い世代か』『自分より年上か』なんて気にしてないんじゃないの?。僕が以前勤めていた会社でも、


『中途採用で来た、上司よりも年上の新人』


だっていたけど、その人に対しても同じように厭味や悪態を吐いていたけどな。そしてその『新人』は、半年もしないうちに退職してしまった。だから『成長』もしてないし、『会社のため』にも別になっていなかったよ?。だからあの上司は、ただ単に自分の感情をぶつけたいだけだったんだっていう実感しかない。


だけど、どうしてそんな『ただ自分の感情をぶつけたい』だけの行為が、『相手の成長を促す』なんて綺麗事でコーティングされるようになったんだろうね?。自分がかつてパワハラを受けて、それで自分がそういうのをできる立場になったから『自分がされたのと同じことをしたい』ってだけなんじゃないの?。そのために自分の行為を正当化するための理屈が必要なだけだったんじゃないの?。


しかも、僕がこんな風に言ってるのを、パワハラを肯定する人たちが、


『厭味だ!』


って言って不快に思うのなら、どうして自分が不快に感じるようなことを他の人他に対してやるの?。『自分もかつて同じようにされた』から?。だから自分もパワハラをしたいの?。だけどそれって、『他人の所為』にしてるだけだよね?。かつてはそれが当たり前のこととして見過ごされてきたって『社会の所為』にしたいだけだよね?。


『自分もそうされてきたから』


『かつてはそれが当たり前の世の中だったから』


と言って他の誰かを不快にする行為を正当化しようとしてるだけだよね?。



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