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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四百三十三 沙奈子編 「都合のいい子」

二月二十四日。金曜日。雨。




今週は土曜授業がないから、沙奈子たちが通う高校は明日休みだ。そしてまた水族館に行くことになるだろうな。


正直なところ、沙奈子以外のみんなは、飽きてきてるのはあると思う。と言うか、間違いなく飽きてる。だけど、


『人生部の活動の一つとして行ってるから、行くのが当たり前』


としてルーチンになってるみたいだね。必ずしも無理に行く必要もないんだけど、別に強制ってわけじゃないんだけど、それでも、


「沙奈が行くんだから私は行くでしょ」


千早ちはやちゃんが言うと、


「だよね。僕も沙奈となら行きたいと思えるよ」


大希ひろきくんも。


すると結人ゆうとくんも、


「まあな。俺も嫌いじゃねーし」


ちょっとつっけんどんな様子ながら実は本当に面倒臭がってるわけじゃないのが分かる表情で言ってくれた。


さらには一真かずまくんも、


琴美ことみは楽しんでるしな」


だって。確かに琴美ちゃんはまだ割と楽しめてるみたいだね。人生部の活動としての意義みたいなのをさすがに理解できる年齢でもないだろうから、行きたくなければ、


『行かない』


みたいに正直に口にするだろうし。『子供は正直』と言うか、『気遣いがまだ上手くないから空気とか読まない時がある』しね。


その一方で、子供だって、自分にとって必要だと感じたら、逆に大人以上に『空気を読んで』しまうことがあるのも確かなんじゃないかな。沙奈子がまさにその典型だった気がするんだよ。自分を押し殺して、心を殺して、自我を表に出さないようにして、周りの大人の顔色を窺って、そうして怒鳴られたり暴力を振るわれたりしないようにするんだ。


それこそが、『子供にとっての処世術』と言うか、『自分の身を守る方法』なんだという実感がすごくある。僕自身も子供の頃はそうだった気がするしね。


大人はそれを利用して子供を意のままに操ろうとする傾向がある気もするかな。そして自分の意のままに操れる子供こそを『いい子』と評するんじゃないかな。だけどそんなのは『都合のいい子』だよね。なんでも自分の都合に合わせてくれる人のことを、自分に歯向かったりしない人のことを、『いい人』とか評したりするのと同じで。


でもそんなのは、『自分に甘い』『自分を甘やかしたい』というだけのような気がして仕方ない。ううん、実際に自分に甘いし自分を甘やかしたいだけなんだという実感しかない。


そういう大人たちが沙奈子や玲那を虐げてきたんだ。結人くんも一真くんも琴美ちゃんもそうして虐げられてきた。その五人に比べるとまだマシかもしれなくても、千早ちゃんもそうなんだろうね。



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