二千四百十二 沙奈子編 「モラルがあるって」
二月三日。金曜日。曇り。
それに今は特に、『ブラック企業』なんて呼ばれる、
『企業の体質自体にモラルがない』
企業もあったりするよね。
法律上グレーなやり方をすることで利益を上げることについても、
『それによって社員や従業員の生活が守られるんだ!』
とか言うかもしれないけど、ブラック企業と呼ばれるそれの場合は、そもそも社員や従業員から搾取することで利益を上げていたりするんじゃないの?。ましてや社員や従業員を追いつめて自分で死を選ぶような形にしてしまうんなら、『社員や従業員の生活を守って』さえないよね?。『それによって社員や従業員の生活が守られるんだ!』なんて詭弁は成立してないよね?。それのどこにモラルがあるって言うんだろう?。
『社会の公器』であるべき企業がそんなことをしてて世の中の規範意識が育まれるとかどうして思えるのかが分からない。
本来なら範を示すべき立場の人たちが規範意識を持たないんじゃ、何も偉そうなことを言えないはずなんだけどな。政治家とかも含めて。
『選挙に通ってしまえば、選挙前に掲げてた公約なんか反故にしたって構わない』
『公職選挙法なんて守ってたら当選できない』
それを当たり前だと考えてる人たちが国を差配してて国民の規範意識が育つと考えられるのかが分からない。
子供の規範意識を育てるのだって同じだよ。生殺与奪の権さえ握ってる親がモラルのない行動・振る舞いをしてて子供のモラルや規範意識が育つだなんて、
「ただのご都合主義だよね~」
って玲那が言うとおりだと思う。だから僕は沙奈子や玲緒奈に親として手本を示すことを心掛けてるし、実際にそうしててこそ、
『モラルがあるってどういうこと?』
というのが感覚として理解できると思うんだ。
『バイトテロ』とか『迷惑行為』とか、それをその場のノリとかで大して悪気もなくできてしまう人たちには、そもそも自分のしてることが『モラルのない行動・振る舞い』だというのが理解できてないんだよね?。だからそんなことができてしまうんじゃないのかな。
だってすごく楽しそうにしてたりするし、自分が注文したわけでもないものを勝手に食べてしまう大人だって、自分がよくないことをしてるという意識をまったく感じさせない、『そうするのが当たり前』と考えてやってるようにしか見えないんだけどな。
絵里奈も、
「この前、セルフレジを導入してる店の前で、それこそ私の両親と同世代くらいの人が『セルフレジを通さずに出てきてやった』みたいに自慢げに電話してましたね。電話の相手はどうやらその人の子供らしくて。すごく情けない気分になりました」
って言ってたよ。




