二千四百十一 沙奈子編 「少し意味合いが」
二月二日。木曜日。曇り。
『モラルのない人間が増えた』
もしそれが事実なんだとしたら、確かにネットの影響もあるんだろうな。ネットで、
『モラルのない行動をしたことで逆に耳目を集めてそれで大きな利を得た人がいる』
という実例を見て、
『じゃあ自分も耳目を集めるようなことをしたら同じようになれるかもしれない』
みたいに考える人も出てきて当然だと思う。でもそれは、単に『モラルがない』と言うよりは、『たとえモラルがない行動をしてでも大きな利を得たい』というのが目的であって、少し意味合いが違うような気もするんだよ。それこそ企業でさえ昔からしている、
『法律上グレーな形を取ってでも利益を上げる』
的なやり方と同じことなんじゃないかな。
そうじゃなくて、『ファミレスのドリンクバーやサラダバーを、注文してないのに利用する』みたいな、『ごみのポイ捨て』みたいな、『夜間に無灯火で自転車に乗る』みたいな、『たとえモラルがない行動をしてでも大きな利を得たい』的なのとはまったく関係なしに行うものこそが本当に『モラルがない行動・振る舞い』ってことのような気がする。
ただ、そのどちらであっても、僕は親として、沙奈子や玲緒奈にそうなってほしくないとは思ってるんだ。だから僕は『モラルのない行動・振る舞い』は、なるべく避けようと思ってる。親が率先してそんなことをしていて子供が真似をしないと考えるような、『自分にばかり都合のいい、ムシのいい解釈』をする大人ではいたくないんだよ。
そして自分がうっかりそういう『モラルのない行動・振る舞い』をしてしまったら、それを棚に上げて子供に対して偉そうに振る舞うなんてこともしないでおこうと思ってる。そんなのは典型的な、
『子供からの信頼を損ねる行動・振る舞い』
だと思うから。
それに、『モラルのない行動・振る舞い』というのは、『誰かを死ぬまで追い詰めようとする行為』も含まれてると思う。そういうのはそれこそ『バイトテロ』とか『客の迷惑行為』とかとは関係なくずっとあったことだよね?。
イジメだってれっきとした『モラルのない行動・振る舞い』のはずなんだけどな。それを反省することもせずに、攻撃しやすい相手を攻撃するというの自体が、『モラルのない行動・振る舞い』のはずだけどな。
とにかく、自分のしていることを棚に上げて他の誰かを攻撃するということ自体も『モラルのない行動・振る舞い』のはずだよ。
だから決して、『目に付くやらかし』をした人だけが『モラルのない人間』ってわけじゃないと思う。




