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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2403/2601

二千四百三 SANA編 「ここまでの大雪は」

一月二十五日。水曜日。積雪十センチ以上。晴れ。




昨日は夕方から大変な雪になった。そしてあっという間に積もって……。


沙奈子は学校からも『大雪になるそうなのでまっすぐ家に帰るように』と言われたからホームルームが終わったらすぐに帰宅してきたことで彼女が帰ってきた時にはまだ積もってはいなかったんだけど、雪そのものは降り出してきてて。


日が暮れ始める頃にはもう数センチ積もってた。しかも、この辺で『雪』と言ったらいつもはすごく湿っぽい感じのなのに、さらさらなそれで。


「おーっ!。うおーっ!?」


少し家の前に出ると玲緒奈れおなが興奮して長靴を履いた足で真新しいのが積もってる部分をどかどかと踏み締めて遊んでた。事務所、今は『人生部の部室』として使ってる方の出入り口の前のスペースにはそれこそ足跡とかなかったしね。さっそく、雪だるまも作ってみた。


だけど、僕としてはなんとも複雑な気分だったのも事実かな。なにしろここまでの大雪は、玲那の事件があった年以来だったから。それ以降も多少は積もることはあっても、ここまでじゃなかった。


あの時の気持ちが思い起こされてしまう。でも、


「パパ!、パパ!!。ゆきだうま!!」


玲緒奈にはまったく関係のない話なんだ。だから僕も、


「お~!。上手にできたね♡」


笑顔で返す。すると玲緒奈は、


「むふ~っ♡」


本当に自慢げに胸を張ってみせた。


ああそうだ。過去は過去として受け止めなきゃいけないけど、でもそれを玲緒奈に押し付けるのは違うと思う。この子にはこの子の人生があるんだ。その事実も認めないと、過去に縛られるだけになってしまう。玲那自身もそんなことは望んでない。


そうして夜になって、


「ははひは~っ!」


玄関から玲那の声が。


「いや、マジですごい雪だね~!」


僕のスマホに玲那からのメッセージが表示されて、階段の下からは玲那のスマホがテキストを読み上げる声。少し遅れて階段のところに顔を出した玲那は笑顔だった。


それが空元気なんだとしても、彼女がそうしたいならやっぱり僕は受け止めるだけだ。


「おかえり」


言いながらすっかり冷たくなった彼女の頬に『おかえりなさいのキス』をする。その反対側の頬には、僕が抱いた玲緒奈が同じように『おかえりなさいのキス』をしてくれた。


「ただいま~♡」


玲那からの『ただいまのキス』が、玲緒奈と僕の頬に。さらに、沙奈子とも『おかえりなさいのキス』と『ただいまのキス』を。だけど僕はその上で、


「ホントにおかえり……」


しみじみと口にしてしまった。すると玲那も察したみたいに、


「うん……ただいま、お父さん……、玲緒奈……、沙奈子ちゃん……」


しんみりとした感じで改めて言ってきて。


そんな玲那の後ろから、


「ただいま」


今度は絵里奈が。彼女もやっぱりしんみりとした表情だったな。



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