二千四百一 SANA編 「必要と感じた」
一月二十三日。月曜日。雨のち曇り。
昨日、三階に設置した『仮設トイレ』を玲那が早速試したんだけど、その後で、
『ごめんパパちゃん!。紙!』
って僕のスマホにメッセージが届いた。そうなんだ。仮設トイレの設置は終わったけど、トイレットペーパーをまだ用意してなかったんだよ。
「ほへん(ごめん)」
ナイロン製の幕の隙間からトイレットペーパーを受け取った玲那が謝ってくるけど、その顔は笑ってた。
僕たちは、生きた人間である限りは当然のこととして有り得る生理現象とかについては、馬鹿にしたり嘲ったり冷やかしたりからかったりはしないでおこうと思ってる。『デリカシー』という意味でもそうだけど、自分がそんなことされてたいていの場合は嬉しいわけないのに平然と誰かのそういうのを馬鹿にしたり嘲ったり冷やかしたりからかったりするなんて、意味が分からないんだ。
衛生上の問題だって、単に具体的に対処するのを心掛ければ済むだけだよね?。その上で馬鹿にしたり嘲ったり冷やかしたりからかったりするのはなぜ?。そんなの、『自分がそうしたい』っていう身勝手な欲求を相手にぶつけてるだけだよね?。それは『我慢が足りない』だけだし、『人として礼儀礼節もわきまえてない』だけだよね?。ましてや親がそんなことをしてて子供が真似をしないなんてムシのいい話を当てにするとか、本当に情けない。
だから僕たちは、そんなことでいちいち相手を馬鹿にしたり嘲ったり冷やかしたりからかったりってしないように心掛けてるんだよ。
なんてこともありつつ、実際に使うことがあるかどうかはまったく未知数ではありつつ、取り敢えず備えの一つはできたと思う。他にも、秋嶋さんが『新型コロナウイルス感染症』に罹患した時の経験で必要と感じた、
『体を起こさなくても薬も飲み物も食べ物も全部届くようになってると、一人でいても安心かも』
というのを参考にして、布団の枕元にカラーボックスを置いて、そこに必要なものを一通り収納しておくことにしようかな。飲み物や食べ物については順次差し入れるとして。
そして今日、学校のHPが更新されて、『生徒に新型コロナウイルス感染症の罹患者が出た』件の続報が。
それによると、濃厚接触の可能性がある学校関係者の検査結果は全員陰性。陽性は、その生徒の家族と、家族の職場関係者だけだったって。しかも、全員が軽症だったとのことで一安心。もっとも、『軽症』といっても秋嶋さんの場合も軽症ということだったから、本人は大変だったりするのかもしれないけど。




