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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百五十六 SANA編 「リモートワーク」

十二月九日。金曜日。晴れ。




なんだかんだでリモートワークが普及し始めたのか、このところずっと、リモートでの打ち合わせが続いてた。だけど次の月曜日には久しぶりに出社しての打ち合わせになる。だから絵里奈が有休を取って家に残る形になった。玲緒奈れおなももう、絵里奈が食事の世話をしてくれることについて嫌がったりしない。そもそもだいたい自分で食べられるようになってきたしね。箸の練習はまだだけど、スプーンやフォークについては上手に使えるようになってきたんだ。


そしてさらに、


「ふぬ~っ!」


って声を上げながらウォール・リビングの壁に掴まって自分の体を持ち上げてた。完全に足を浮かせて腕だけで自分の体重を支えてる。


「ふばっ!」


さすがにその姿勢を維持することは難しかったみたいだけど、これはもういよいよ、自力で壁を超える日も近いな。外に出るのは一日一時間ほどの散歩だけでも、ウォール・リビング内を縦横無尽に進撃して転げまわって壁に体当たりしまくって、実はまあまあ運動はできてる気がする。しかも散歩中も、ほとんど自力で歩くんだ。抱っこするのは十分もない。抱っこされて満足すると、


「おりる!」


って言って自分から下りたがるんだよ。自分の脚で歩いてっていうのが楽しいみたいでね。


おかげで僕もそれほど運動不足にならずに済んでるかな。


とにかく、『新型コロナウイルス感染症』の件が収まってきたら玲緒奈もつれて歩いて買い物とかに行こうかなと思う。あくまで散歩を目的にしてそのついでに買い物もするというだけにしてね。だから玲緒奈のしたいようにしようと思うんだ。もちろんそれはスーパーとかで騒がせるということじゃない。ちゃんと彼女の言葉に耳を傾けることで騒いだりしなくても済むようにってだけだ。


育児休業中に絵里奈と交代で買い物に行ってた時、小さな子供を連れてる人らの様子を見てて感じたんだけど、子供が話し掛けてるのに無視してるのがすごく多くて気になった。しかもそうやって親に無視されてるうちにだんだん声が大きくなっていったりしてたんだ。そして、店の中を走ったりしてる子も、親がちゃんと相手してないように感じた。


やり方はそれぞれかもしれないから別に口出しはしないけど、それを参考にさせてもらおうとは思ってる。これまでそうしてきたように、ちゃんと玲緒奈の言葉に耳を傾けて、意識を向けて、聞き入れられることは聞き入れつつ、無理なことはなぜ無理なのかを丁寧に説明して、妥協案を提示させてもらおうと思う。


玲緒奈も別に、何でもかんでも自分の思い通りにしてもらおうとは思ってないんだよ。話を聞いてもらいたいだけなんだ。彼女をよく見てるからこそそれが分かる。


ところで、火曜日から今日まで沙奈子たちは期末考査だったから、昼からは『人生部』の活動に集中してた。テスト自体はみんなこれといって問題なかったようだ。



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