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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千三百三十七 SANA編 「こんなつらい形で」

十一月二十日。日曜日。曇り。




昨日は、千早ちはやちゃんのことはあったけど、だからこそ気分転換も兼ねて、学校の土曜授業が終わってから、人生部として水族館に行ってきてた。


「私のせいでみんなの活動ができなくなるのは嫌だし」


って千早ちゃん自身も言ってたしね。


しみじみ、『人生』についていろいろ学ぶことができてる活動だと思う。さすがに学校では、ここまでリアルな形で『セックス』や『妊娠』や『堕胎』について学ぶことはなかなかないと思うしね。


正直、こんなつらい形で学ぶ必要なんてないかもしれないと思わなくもない。だけど『つらい』という話なら、沙奈子も千早ちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんも一真かずまくんも琴美ことみちゃんも篠原さんも、みんなそれぞれつらい思いを乗り越えてきてる。だからある意味じゃ『いまさら』なのかもとも思う。


人生っていうのは本当にどこに落とし穴があるか分からない。思いがけず心に傷を負うこともある。僕たちの周りにはそれこそ順風満帆なだけの人生を送ってきた人はいない。家庭自体は恵まれていたはずの星谷ひかりたにさんでさえ、そういう表面的なことだけでは分からないつらさを経験してきてる。


僕はその事実についても分かりたいと思う。しかも星谷さんの場合、愛してる大希くんが『七人もの人を死なせて死刑になった元死刑囚の孫』という大変な現実を突きつけられた上で自分の想いを貫こうとしてるんだ。それが決して簡単なことじゃないのはまぎれもないはずなんだ。だから、家庭環境が恵まれてるからと言って何もつらい経験をしないわけじゃないよ。


だからこそ僕たちは、自分の力だけじゃ乗り越えていけそうにないつらい人生を、みんなで力を合わせて支え合って生きていこうと思うんだ。


自分の力だけで生きていけると思ってる人はそうすればいいにしても、でもそれなら、誰かに八つ当たりしてストレス発散の道具にするのはやめるべきなんじゃないかな。そんな形ででも他者を利用しようとするなら、決して『自分の力だけで生きてる』なんて言えない気がする。自分が八つ当たりしてストレス発散に利用できる人の存在に依存してるってことじゃないの?。少なくとも僕は、沙奈子や玲緒奈れおながそういうことをしてたら『自分の力だけで生きていけてる』なんて認めたいとは思えない。


結局は誰かに頼って依存しなきゃ生きられないのなら、その事実を認めて、自分が頼って依存しなきゃならない人を大切にしようと思える人でいてほしい。


千晶ちあきさんは、不実な相手であっても付き合わずにはいられなかったんだと思うと、たとえ仕事をしてても自立なんてできてない気がして仕方ない。それ以前に、千晶さんも、もう一人のお姉さんの千歳ちとせさんも、とても一人暮らしなんてしていけないみたいだけどね。経済的にも、自分の身の回りの世話という点でも。



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