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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百八十四 SANA編 「負担を押し付けて」

九月二十八日。水曜日。曇り。




玲緒奈れおなの湿疹は、翌日にはもう綺麗に治まってくれてた。痕も残らなかったみたいだ。だけど、卵や牛乳を使ったメニューについては慎重にしなくちゃと思った。それこそほんの一欠片ずつとか、そういう感じで様子を見つつ進めていこう。


絵里奈が卵も牛乳も控え目にを心掛けて作って、しかも玲緒奈も二歳になったのにこれだからね。


ああ、それで、健康の話となると、秋嶋あきしまさんの『新型コロナウイルス感染症の後遺症』については、かなりマシになってきたらしい。


『何とか仕事中は立ってられるようになりました』


玲那にそうメッセージがあったって。しかも、


『酸っぱみが分かりにくくなってたのと、アルコールの匂いが分からなくなってたのも、かなりマシになりました。ご心配をおかけしまた』


とのこと。よかった。こうやって時間が掛かっても治まってきたということは、まだ軽い方だったんだろうな。


そしてそのことも含めて、玲那とのやり取りは、アニメのことで対立して気まずくなる以前のそれにまで戻ったそうだ。だけどそれと同時に、


「言っても、お互いに拘りのあることについてだったからね。だから敢えてその話題には触れないようにしようってのが当面の約束事かな」


だって。確かに、そういうのを『完全になかったことにして』というのは実際にはすごく難しいと僕も思う。だからこそ、触れないようにするという形で折り合いをつけるというのも一つの方法なんだろうな。どちらか一方だけに我慢させてというのは、やっぱり無理があると思うんだ。そしてそういう形で互いを気遣うことができるというのも、人間関係においては大事なんじゃないかな。


『我慢をしたくない』


そんな人も多いみたいだけど、それはお互い様だよ。みんなちょっとずつ我慢をすることで社会というものは成り立ってると思うんだ。


ただその一方で、昔の沙奈子のようにひたすら我慢を強いられているというのも、とても健全とは言えないと思う。ましてや、虫歯ですごく歯が痛いのに治療さえ受けさせないなんて、これはどう考えたっておかしいよ。


『一切我慢をしたくない』というのは、それは他の誰かに我慢を強いることになるだけだから好ましくなくても、『過剰な我慢を強いる』のもおかしいと感じずにはいられない。


その辺りをどう折り合うかを考えないといけないはずなんだ。特に大人はね。なのに、


『難しいことなんか考えなくていい』


みたいなことを大人が言ってると、何とも言えない気分になる。必要以上に考えすぎて袋小路に入り込んでる人に掛ける言葉としては有り得ても、自分が物事を考えなくていいと思ってるのなら、それは他の人に負担を押し付けてるだけでしかないんじゃないかな。



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