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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百八十二 SANA編 「ケーキに挑戦する」

九月二十六日。月曜日。晴れ。




今日は田上たのうえさんの誕生日。そして玲緒奈れおなの誕生日でもある。


だからついに、彼女用の特別製だけど、玲緒奈もケーキに挑戦する。田上さんのケーキは千早ちはやちゃんが昨日のうちに作って、絵里奈が『SANA』に持って行って渡して。そして玲緒奈のケーキは絵里奈がやっぱり昨日のうちに大体のところは作っておいて、仕事が終わって帰ってきてから仕上げてた。


それは、大人なら三口くらいで食べられてしまいそうな、可愛らしい小さな小さなケーキだった。そこにロウソクをイメージしたスティックタイプの幼児用お菓子が二本、ウサギの耳みたいな感じで刺さってる。


「うはは♡ かわいい~!」


「ホント可愛い」


玲那と、人生部としての活動が終わってリビングに上がってきた沙奈子が声を上げる。


「玲緒奈、二歳の誕生日、おめでとう♡」


「おめでとう♡」


僕が音頭を取って、絵里奈と沙奈子と玲那が手を叩きながら笑顔で言ってくれて。


「れおなの?。こえ、れおなの?」


テーブルに掴まってぴょんぴょん跳ねながら聞いてくる彼女に、


「そうだよ。玲緒奈のケーキだよ」


言うと、ガシッとスティックタイプの幼児用お菓子を掴んでまずそれを口にくわえた。ホントはもちろんケーキが本体なんだけど、食べ方は本人に任せよう。


「そっちからか~い!」


玲那はツッコんでたけどね。けれどそんなツッコミにも玲緒奈は、


「うけけけけけけ♡」


嬉しそうに笑いながらお菓子をボリボリとかじっていく。確かにちゃんとケーキを味わってほしいと思いつつ、それはあくまで僕たちの勝手な希望だからね。別に『そうじゃなきゃいけない』ものでもない。


それに玲緒奈も、お菓子を食べた後は、スプーンを手にして、ケーキをざっくりと削り取って、


「あ~!」


大きな口を開けて、ってしようとしたら、スプーンの上のケーキの欠片がバランスを崩して。


「あ…!」


僕は思わず手を差し出して、転げ落ちそうになったケーキの欠片をキャッチしてしまった。だけど玲緒奈は、


「う~っ!」


ケーキを落としてしまったことが悔しかったみたいで、泣きそうな顔になった。だから僕は、キャッチしたケーキの欠片を、


「ほらほら、まだ大丈夫だから。あ~ん」


って彼女の口の前に持っていく。すると玲緒奈も気を取り直して、


「あ~ん」


また大きく口を開いて、ケーキの欠片を食べてくれた。そしたら、


「ん!」


今度は驚いたみたいな表情になって、


「うま~っ♡」


目の端には涙の雫を残したまま笑顔に。気に入ってくれたみたいだ。


僕は手に付いたクリームを舐めた後、絵里奈と玲那と沙奈子に玲緒奈を任せて、ミニキッチンに手を洗いに行く。ケーキだと思ったら甘さはまったく物足りないかもしれないけど、これはこれで僕は嫌いじゃない。



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