表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2266/2601

二千二百六十六 SANA編 「まさにこれから」

九月十日。土曜日。晴れ。




今日は琴美ことみちゃんの誕生日。


土曜授業もなかったことから、朝から千早ちはやちゃんがケーキを焼いてくれていた。エプロンドレス姿で。


「琴美のために、ありがとう」


「いやいや、琴美ちゃん、いい子だし!。こんくらい余裕余裕!」


千早ちゃんが言うように、琴美ちゃんも、沙奈子と同じで愛想はないけど、少なくとも今は誰かに対して理不尽なことはしてないからね。


ただそれも、『これまでそういうことがなかった』『これからもそういうことがない』というのを保証はしてくれない。


『これまでにそういうことがあった』としてもそれについてはもう起こってしまったものだからなかったことにはできなくても、『これからもそういうことがない』ようには、『そういうことをする必要がない』ようには、していってあげないとと思う。


それが、琴美ちゃんのすぐ身近にいる大人である僕たちの役目だと思うんだ。


沙奈子が誰かに対して理不尽に振る舞う必要がないみたいにね。千早ちゃんや結人ゆうとくんが誰かに対して理不尽に振る舞う必要がなくなったみたいにね。


『他の誰かに対して理不尽に振る舞う必要がない』


ということの重要さを実感する。


人間は弱い生き物だから、自分が虐げられてると感じると、周りから理不尽なことをされていると感じると、それを言い訳にして『他人の所為』『社会の所為』にして自分も同じようにしていいと考えてしまいがちなのは分かってる。他でもない僕自身にそういう部分が確かにあるんだ。だけどそれを、沙奈子や絵里奈や玲那が抑えてくれてるんだよ。山仁やまひとさんや星谷ひかりたにさんやイチコさんや波多野さんや田上たのうえさんや鷲崎わしざきさんが抑えてくれてるんだ。


だったら、琴美ちゃんに対してもそういう存在になりたい。


「……食べていいん……?」


自分の前に出されたバースデイケーキを見て、琴美ちゃんはそう聞いた。自分の名前まで書かれたそれについてそんな風に確認せずにいられないほど、彼女は自分の親に裏切られ続けてきた。だけど、


「もちろん!。なんなら全部食べたっていいんだよ!。だってこれは琴美ちゃんのケーキだからさ!」


千早ちゃんが満面の笑顔でそう口にする。そうだ。琴美ちゃんがこの世界に生まれてきたことを、千早ちゃんも、沙奈子も、大希ひろきくんも、結人くんも、一真かずまくんも、僕も、絵里奈も、玲那も、受け入れてる。これはそれを形にしたものだ。


僕も沙奈子ももう自分がここにいていい実感がすごくあるからこんな風にわざわざイベントとして形にしてもらわなくても平気だけど、琴美ちゃんがそれを実感するのは、まさに『これから』だからね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ