二千二百五十七 SANA編 「そこまで効果は」
九月一日。木曜日。雨。
秋嶋さんは、昨日、外出制限が解除されて、今日から仕事に復帰したそうだ。ただ、体調はまだ完全には戻ってないらしい。ずっと立っていられないって。
ところで、ワクチンについては、インフルエンザワクチンだって接種してもインフルエンザに罹ることはあるし、効果もワンシーズンくらいしか期待できないんだよね?。だから毎年、流行が始まるのに合わせてワクチンを打ってたりしたんだよね?。
だから、『一年を通して流行するような風邪のウイルスに対しては、そこまで効果は期待できないかもしれない』
と言われても、『まあそうかもね』としか感じないんだ。インフルエンザについては、基本的に流行するのは冬だけだったからワンシーズン乗り切ればそれで十分な効果が期待できても。
熱が出たりという副反応についても、インフルエンザワクチンでもあったことだしね。
『二年で打った人が亡くなるというワクチンのふりをした毒』
なんていう漫画やアニメの設定を信じることができない僕には、そこまでのリスクも感じ取れない。
「まあねえ。そもそも普通に市販されてる薬だって、用法容量守らなきゃヤバいことにもなりかねないものが当たり前だったりするしね。しかも、アレルギーとか強い反応が出る可能性だってあるっしょ?」
玲那が言って、
「そうね。薬って実際には『薄めただけの毒』とも言われるしね」
絵里奈も口にする。何しろ、二人は、
『当たり前にスーパーでさえ売られてる『酒』というものが原因の一つになって香保理さんを亡くしてる』
わけで。
こう言うと、
『リストカットしなきゃ死なずに済んだだろ!。酒の所為にするな!』
とか声を荒げる人が必ず出てくると思うけど、香保理さんだけじゃなく、酒が原因で命を落としてる人なんて、それこそ別に珍しくもないよね?。飲酒運転で事故が起こって亡くなった人もいるし、飲酒したことで気が大きくなって喧嘩とかして亡くなった人だっている。『急性アルコール中毒』で亡くなるような人はそれこそ直接の原因じゃないのかな?。
そんな風に、ごくごく日常的に『命に関わる毒』に接してきてるのに、東日本大震災の時の放射能の件でもそうだったけど、過剰に気にするのってどういう心理なんだろう。
『子供をこの世に送り出すのは親の勝手』
『子供本人に事前に承諾をもらった事実も確認を取った事実も存在しない』
という明確な現実とも向き合えないような人が、『自分はワクチンの真実を見抜いてる!』と、漫画やアニメの設定のような話を真剣に信じてるのが、本当に意味が分からないんだ。
本人がそれを信じてるだけなら別に好きにしててくれていいんだけど、他者に押し付けようとしてるのがね。
『漫画やアニメの設定を信じられない』
それがそんなに不思議?。




