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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百四十六 SANA編 「療養施設として」

八月二十一日。日曜日。曇りのち雨。




沙奈子が、一人で電車に乗って大阪の専門学校に通う。


本音を言わせてもらえば、少し心配な部分はある。本当にこの子が一人で電車で通学なんてできるのかなって。人混みが苦手で、人の多いところにいると酔ってしまうような子だったのに。


だけどそれで言えば、今では毎週のように水族館に通い、たくさんの人がいるところで生き物のスケッチをできるくらいなんだから、きっともう大丈夫なんだろうなって感じる面もあるんだよね。


そういう複雑な気分も、親ならではなのかな。


「どるるーあ、どるるーあ、ぶるるどるる~!」


僕にもたれかかって謎の歌を歌いながら自動車の玩具をいじってる玲緒奈れおなのぬくもりを感じながら仕事をしつつ、ちょっとセンチメンタルになったり。すると、


「やっぱり心配ですか?」


僕の前で星谷ひかりたにさんとビデオ通話で会議をしていた絵里奈が問い掛けてきた。


「え?、そんなに顔に出てた?」


思わず問い返すと、


「はい。いたるさんも顔に出るタイプですから」


笑顔でそう言われて。さらに玲那も、


「そうそう、パパちゃんも隠し事とかできないタイプだよね~」


ニヤニヤ笑いながら言ってきて。


「まいったな……、そうなんだ」


自分じゃそういうのよく分からないからね。だけど、悪くない。そんな自分のことを理解してくれてる人がこうして傍にいるというのは、悪くないな。


すると星谷さんも参加してきて、


「私も千早ちはやの成長を嬉しく思う反面、少し寂しいと思う気持ちと、『大丈夫でしょうか』と心配になる気持ちが確かにあります。彼女はとてもバイタリティ溢れる逞しい人なので、大丈夫だとは思いつつ、これが『親心』なのかとも思わされるんです」


だって。


確かに、千早ちゃんにとって星谷さんはそれこそ姉であり母親みたいな人だ。そして星谷さん自身も、千早ちゃんのことをそれこそ本当の家族のように思ってる。そういうのが伝わってくる。


そして星谷さんは、


「だからこそ、沙奈子さんや千早の夢のためにも今のこの状況を乗り切る必要があるでしょう。ですから、万が一、どなたかが『新型コロナウイルス感染症』に罹患した場合でも確実に対応できるような体制作りが必要だと感じました。行政に任せているだけでは正直なところ不十分だというのが私の印象です。そのため、療養施設として私の家の別荘を開放することにしました。今回のことでゲストがほとんどこれなくなったため、スケジュールが空いているんです。これを利用しなければそれこそ宝の持ち腐れというものでしょう」


と口にしたんだ。



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