二千二百四十一 SANA編 「結人の作品だって」
八月十六日。火曜日。晴れ。日没後から雨。
沙奈子たちはもう全員、課題を完全に終わらせた。篠原さんも終わらせることができたそうだ。
「こんな楽しく課題をやれたのは初めて」
嬉しそうにそう言っていた。そんな中で、沙奈子は学園祭に向けてもう自分が着る衣装の準備を始めて。そして、
「メイド服っぽいエプロンドレスにしようと思う」
ということだった。
「おお、メイドお!。ザ・定番中の定番ですな」
千早ちゃんがニヤリと笑みを浮かべる。
「なら私もお揃いで」
と言うのも、千早ちゃんのクラスもコスプレをするんだって。それどころか、全学年全クラスの三分の一以上がコスプレすることになるみたいだ。最終的に決めるのは夏休みが終わってかららしいけど、実際にはもう、夏休み前にはだいたい決まってたらしい。なんでも、『ハロウィン用のコスプレの試作』が目的の一つになってるみたいで。だから、漫画やアニメのコスプレと言うよりも、『ハロウィンの仮装』って感じなのかな。
そして、
「私も同じ材料を取り寄せようかな」
千早ちゃんが言うと、沙奈子は、
「予備に二着分、材料は買ってあるからそれでいけると思う」
って。
「さすが沙奈!。用意周到!」
そんなわけで、沙奈子と千早ちゃんが、『メイドっぽいコスプレ』で、大希くんは『忍者』で、一真くんは『バラエティ番組のハンター』ってことになったらしい。
「あはは、一真には似合いそう!。めっちゃ追っかけてくるヤツね!」
千早ちゃんも嬉しそうだ。でもその一方で、結人くんのクラスでは、『それぞれ自分で作ったものの展示』をするらしくて、
「結人の場合は、ドール用の家具一択だな。てか、完全に結人のための企画じゃん」
って千早ちゃんは言うけど、結人くんは、
「ちげーよ。クラスにプラモ作んのがメチャクチャ巧えのがいて、そいつの作品をガッコで展示すんのが狙いなんだよ」
だって。なるほど、そういう特技を持っている生徒がいるのか。
だけど、結人くんの『ドール用の家具』だって、実はもう『SANA』を通じて販売が始まってて、たまに売れるそうだ。沙奈子のドレスに比べれば控え目でも、短期アルバイトを何度かした程度は収入にもなってる。彼もあまり無駄遣いするタイプじゃないからほとんど残してるらしいけどね。
それを知ってるから千早ちゃんは、
「そんな謙遜すんなよ。結人の作品だって売れてるんだぜ?。もう立派にプロじゃん。それで言ったら私なんか、ケーキじゃ稼げてないしさ」
と苦笑いしながらも、どこか自慢げだった。沙奈子や結人くんがそうやって『作品』でお金を得てることが、彼女にとっても自慢なんだ。




