二千百九十七 SANA編 「二重三重に対策して」
七月三日。日曜日。雨。
今日は久しぶりの雨で気温もさすがに下がった。
それはそれとして一真くんの誕生日でもある。だから朝から千早ちゃんはケーキを焼いて。
ところで、昨日辺りから何か携帯電話の通信障害が大規模に発生してるみたいだね。僕たちが契約してるのとは違ってたんだけど、波多野さんと田上さんがまさにその携帯電話会社のスマホを使ってて。ただ、二人とも、
「なんか、電話が繋がらないらしいから、もし連絡ある時はアプリの方でお願いします」
「通信障害で電話が繋がりません。でも家のWi-Fiを通じてなら連絡できるからアプリでお願いします」
って絵里奈に連絡してくれて。もちろん、アプリの通話機能を使ってね。でも、普段からそっちで連絡を取り合っているから、Wi-Fiが使えるところでなら何も問題なかった。アプリのそれは音質こそちょっとあれでも、用件を伝えるだけのやり取りなら十分だったし。
こういう形で、連絡方法をいくつか確保しておくことも大事なんだなって改めて思わされた。うちも、最大手の電話会社の光回線を家に引いた上でスマホとかも使ってるんだ。月々の料金こそ少し高いみたいだけど、まあ、安定して使えてるからいいかな。以前、スマホの方は通信障害もあったみたいでありつつ、そこまでスマホでのやり取りは重要視してないしで、そんなに影響もなかった。通信障害が出てるって分かった時点でお互い割り切って、
『Wi-Fiを通じてならアプリで連絡できるから大丈夫か』
程度にしか考えてなかった。
どんな便利なものでもこういうことはあるからね。それに頼ってる人は困ったかもしれないにしても、だからってショップに怒鳴り込んでも、ショップはただの窓口であって、設備の維持管理をしてる部門じゃないし、そもそも『代理店』としてのショップの場合は別会社だし。
通信障害とかがあったらイメージに大打撃なのは携帯電話会社自身だから、必死に回復させようとはすると思うよ。実際、『他の携帯電話会社に乗り換える!』みたいなことを言ってる人もいるらしいから、長引けばそれこそ死活問題だろうしさ。
だから、『代わりの通信手段』を確保して、あとはのんびりと待つしかないんじゃないかな。
なんてことを、今日もプールで遊ぶ玲緒奈を見守りつつ考えてた。どんなことでも『完璧』はない。ないから、僕はこうやってプールで玲緒奈を遊ばせてる時も油断はしない。子供が溺れる時って実は騒いだりしないこともあるって聞くし。実際、イチコさんがお風呂で溺れかけた時も、騒いだりしなくてただお風呂の底で呆然としてただけらしいし。
そういうのをちゃんと理解して、二重三重に対策しておく必要をつくづく感じたな。




