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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百七十 SANA編 「手抜きカレー」

六月六日。月曜日。雨。




この前の土曜日は、お昼を済ませた後で、沙奈子と玲那と結人ゆうとくんとでまた水族館に行ってた。そして一階の『部室』では、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと一真かずまくんと琴美ことみちゃんが人生部としての活動を。


千早ちゃんがいつものように、『食品を扱う仕事のシミュレーション』としてあれこれしてるのを、一真くんも参加して。そのついでに、一真くんに料理の手ほどきをしたり。


一真くんも、両親の食事を作ってきたことで自己流ながらまあまああれこれ作れるんだけど、


「そんなやり方があるんだ……」


自己流だからこそ知らなかったやり方を千早ちゃんから教わって、感心してたりしたみたいだ。僕自身は、『料理なんて食べられれば細かいことはどうでもいい』って考えてる部分もありつつ、ちゃんと教わるのも大事だとは分かってるつもりなんだけど、わざわざ学んでまでやりたいとは思わないかな。


ただ、自己流でも、沙奈子と一緒に料理を作ってた頃のことを思い出して、なんだか胸があったかくなる。ああ、そう言えば、冷凍野菜を煮てそこに市販のカレールゥを溶かしただけの『手抜きカレー』なんかも、よく作ってたな。小さな鍋で、沙奈子用の甘口カレーを作った後で辛口のルゥを足して僕用のカレーを作るなんてこともしてた。今はもうすっかりやらなくなったけど、もし、一人になったりしたらまたきっとそういう『手抜き料理』で自炊することになるだろうな。


たとえそういう手抜きでも自分でできるというのは大事だって気がする。『家族がいないと何もできない』なんて、そんなの『自立した大人』とは言えないと思うんだ。だから玲緒奈れおなにも、自分のことは自分でできるようになってもらおうと思ってる。幸い、すごいお手本がうちには何人もいるからね。絵里奈に沙奈子に千早ちゃんに大希くん。料理についてはみんなプロ級の腕前だよ。


でもだからといって玲緒奈にもそこまでになれと言うつもりもないんだ。実際、僕も玲那も、料理についてはまったくダメダメだし。『自分が食べるだけならまあ我慢できる』程度って感じ。掃除も洗濯も、『できないわけじゃない』だけで。自分がそうなのに『完璧にできるようになれ』というのも違うと思うし。


自分のことが自分でできればそれでいいんじゃないかな。それ以上については、なりたいと思えばなればいいし、そうじゃなければ『手抜きカレー』みたいなものでもいいと思う。僕自身がそうだから、それ以上を期待するのはね。



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