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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百三十三 SANA編 「心を閉ざすことで」

四月三十日。土曜日。晴れ。




昨日は結局、一真かずまくんは三時頃になってようやく戻ってきた。


「すいません……。お騒がせしてしまって……」


とても高校一年生とは思えない老成した様子で、ビデオ通話の画面の向こうから頭を下げてきて。


琴美ちゃんの様子からも、二人にとっては取り乱すほどのことじゃなかったんだろうなっていうのが分かってしまって……。


本当にそこまでの両親だってことなんだろうな。




そして今日は、朝から一真くんに送ってもらって琴美ことみちゃんが来てた。小学校は休みだから。小学校が休みで、一真かずまくんは学校がある時なんかには、朝からもう家を出て公園とかで時間を潰してたらしい。高校で土曜授業もあることになってどうしようか迷ってたところにうちに来れるようになったことで、一真くんは本当にホッとしたみたいだ。


もちろん、心配がないわけじゃないと思う。まったくの赤の他人の家になんて。だけど、『何かある』としてもそれも覚悟しなきゃならないほど、一真くんには選択の余地がなかったんだろうな。


そんな琴美ちゃんは今、二階の和室の方で、沙奈子の机で椅子に座って、ゲームをやっていた。千早ちはやちゃんがもうあまり使ってなかった古い携帯ゲーム機だけど、琴美ちゃんには新鮮みたいで、すごく熱心にやってるんだ。


ゲームの内容自体は、千早ちゃんがむちゃくちゃ強くして本編をクリアしたもので、適当にゲームの世界の中をうろついてるだけでモンスターが出てきて戦うことになるんだけど、何も考えなくても負けない程度には強いそうだ。


それを琴美ちゃんは、無表情なまま淡々と続けてる。面白いと思ってるのかどうか、その表情からは分からない。けれど続けてるってことは面白いと思ってくれてるのかな。


すると玲緒奈れおなはそんな琴美ちゃんを指差して、


「どるるるどるるる!。ことーっ!」


って声を上げた。なのに琴美ちゃんはちらっと玲緒奈の方を見ただけで、またゲームの画面に視線を戻してしまった。


「ぶーっ!」


玲緒奈は琴美ちゃんの態度が気に入らなかったのか不満そうだったけど、僕のところに来て膝の上にどっかと座ると落ち着いたみたいだ。そうだね。気に入らないことがあってもこうやって僕の膝に座れば落ち着けるんなら、それでいい。


「……」


「……」


絵里奈と玲那は、困ったように顔を見合わせてたけれど。


沙奈子に似た感じのようにも見えて、でもやっぱり沙奈子とは違うんだって分かる。そうなんだ。沙奈子は沙奈子で、琴美ちゃんは琴美ちゃんだから。こうして心を閉ざすことでずっと自分を守ってきたんだろうなって印象があった。



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