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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千六十六 役童編 「元々の彼女の性格」

二月二十二日。火曜日。曇り。




世の中には、『子育てより仕事の方が大変だ』って言う人がいる。だけどそれはおかしいと思うんだ。それを言う人って、自分の母親、場合によっては父親のときもあると思うけど、主に自分の面倒を見てくれた人を軽く見てるよね?。敬ってないよね?。敬ってたら『どっちが大変か?』なんて考え方はしないんじゃないのかな?。


そして、『SANA』を立ち上げたことでまた別に思うようになったんだ。


『子育てよりも仕事の方が大変だって言うなら、どうしてやろうとしないの?』


って。仕事よりは大変じゃないんだよね?。だったら共働きの家庭なんかだとそれこそちゃちゃっとやってみせればいいんじゃないの?。仕事よりも楽だったり簡単だったりするんなら。


こんな風に言ってもあれこれ言い訳並べてやろうとしない人がほとんどなんだろうけど、それは個人の考えだから面と向かって僕が口出しすることじゃないと思うけど、僕自身は絵里奈を敬うからこそ彼女だけに押し付けようとは思わなかったんだ。『SANA』を立ち上げた今、彼女も我が家の家計を支えてくれてる。星谷ひかりたにさんや山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーの山下やましたさんや提携先の企業の担当者との打ち合わせを『テレビ会議』という形で行って、その上で『SANA』の業務全体を統括管理してる。沙奈子のドレスのデザインについて玲那も交えて検討したりっていうのも仕事だ。決してウォール・リビングで寛いで時間を潰してるわけじゃないんだよ。


そんな絵里奈に玲緒奈のことを全部押し付けようとは思わない。


何より、『子供を育てられる』という貴重な体験を丸投げしようなんて思わなかったんだ。幸い、玲緒奈れおなも僕にすごく懐いてくれたし。


僕たちが育てているのは『人間』だ。ペットじゃない。子供の前で家族を敬わない振る舞いなんかしてて、それでどうやって子供が『自分以外の誰かを敬う』振る舞いを身に付けられると思えるの?。自分の周りの人がしゃべっているの聞き取って、それで言葉を覚えていくのと同じように、自分の周りの人の振る舞いを見て、『人としてどう振る舞えばいいのか?』っていうのを学んでるんだと、玲緒奈を見て改めて実感したよ。


すごく元気ではきはきしてて声も動きも大きくて快活な玲緒奈のそれは、たぶん、『元々の彼女の性格』なんだと思う。絵里奈が赤ん坊だった時にもこの感じだったそうだし。だから『生まれつきの性格』というのも確かにあるんだろうけど、だからって『人としてどう振る舞えばいいのか?』というのを教えなくていいってわけはないと思うんだけどな。



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