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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千六十一 役童編 「なれなくてもそん時は」

二月十七日。木曜日。曇り。




昨日、無事に沙奈子たちは入学試験を終えられた。


「どうだった?」


帰ってきた沙奈子にそう問い掛けると、


「うん、いつも通りにできた」


珍しく少し自慢げな様子でそう言ってくれたんだ。他の人には分からなくても、僕には分かる表情だった。


「そっか。じゃあ、後は結果が出るのを待つだけだね」


言いつつ、千早ちはやちゃんと結人ゆうとくんにも向かって、


「お疲れ様でした。今日はゆっくり休んでくれたらいいと思うよ」


と言ったけど、


「いやあ、時間ばっか掛かってメンドかっただけで、余裕でしたから」


「にしし♡」って感じで千早ちゃんは笑って、


「確かに、あれだったらいっぺんにやってくれてもよかったよな」


結人くんはシニカルな様子で口にする。『試験が上手くいかなくて落ち込んでる』みたいなのはまったく見えなかった。実際、帰ってからの自己採点でもやっぱり全員A判定。結人くんだけが解釈次第ではちょっと微妙かな?という感じらしいけど、今回の受験者がよほど優秀なのが多かったりでもしない限りは大丈夫だろうというのが星谷ひかりたにさんの評価だった。


だからもうじたばたしても始まらない。結果が出るまでは『まな板の上の鯉』だ。


そして今日も、沙奈子と千早ちゃんと結人くんが、学校を終えた後、うちの三階で寛いでる。遊んでてもいいのにいつも通り自主勉強を済ませた上で。


大希くんは自宅だけど。


さらにバイトが休みの波多野さんがビデオ通話で参加する。


「で、どうだったんよ?。結局」


「くくく、余裕ですぜ、姉御」


「なに言ってんだお前?」


波多野さんと千早ちゃんと結人くんがそんなやり取りをして、


「沙奈子ちゃんはどうだった?」


話題を振られた沙奈子も、


「うん、自分ではできた気がする」


と応えてた。


「そっか。じゃあみんな、無事に私の後輩になれそうだね。ま、なれなくてもそん時はそん時だけどさ」


波多野さんもさっぱりした感じで言う。


そうだ。今回の入試で人生そのものが決まってしまうわけじゃない。世の中にはそれで人生が決まってしまう人もいるのかもしれないけど、沙奈子たちはそうじゃない。これから後の選択肢だってちゃんと用意できてる。してもらえてる。あとは本人たちの努力次第というところまで準備はしてもらえてるんだ。


大変な資産家にはなれなくても、そういうルートは用意できなくても、普通に真面目に仕事をしていればだいたい大丈夫というのはあるんだ。一人だけで誰の力も借りずに生きていくには厳しくても、ちゃんと力を借りられる生き方をしていればね。



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