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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2050/2601

二千五十 役童編 「彼と一緒に」

二月六日。日曜日。晴れ。




一歳三ヶ月を過ぎて、玲緒奈れおなはかなりしっかりしてきたと思う。


「パパっ!。ママっ!。あぶるぶあぽっぷ、ダメッ!!」


僕と絵里奈を前にして、なんだか謎のダメ出ししてきたりもする。何がダメなのかよく分からないけど、彼女にとっては何かが納得いかないらしい。そこで僕と絵里奈が、


「うん、ごめんね」


「パパとママもちゃんとしないとね」


って応えると、


「ヨシ!!」


とか言いながらすっごいドヤ顔でふんぞり返ったりもする。たぶん、『何かをしてほしい』というよりも、結局、自分の言葉に耳を傾けてほしいってだけなんだろうなって実感がある。それに、玲緒奈はあんまりひどくぐずったりしない。機嫌悪そうに文句言ってることはあっても、


「ふんふん。そうなんだ?」


と僕が彼女の言葉に耳を傾けてると気が収まるみたいで、いつまでも引っ張ったりしないんだ。そんな様子を、僕自身の両親と僕との関係とで比べてみる。すると僕の両親がいかに僕のことを疎んでいたのかがより一層、分かってしまう。あの人たちの目には僕は『人間』に見えていなかったんだろうなっていうのが分かってしまう。あの人たちにとって僕は、


『いつの間にか勝手に家に居ついた野良猫』


みたいなものでしかなかったんだ。少なくとも、僕や絵里奈が玲緒奈に対して向けている視線とはまったく違う。僕の家庭のことを知らない赤の他人には分からないだろうけど、びっくりするほど違うのは事実なんだ。


あんな人たちが何を努力してたって?。現実には野良猫じゃない僕が死んだら自分たちの責任が問われるから、それが嫌で死なせないようにしてただけなのが、自分が親になったからこそ改めて思い知らされるだけだよ。『育てて』なんてなかった。『死なせないようにしてた』だけだった。


だけど僕も絵里奈も、玲緒奈を育てようと思ってる。この子が人間として生きる上で必要なことをこの子の前で『手本』と示して学んでもらおうと思ってる。『人間として生きるにはどうすればいいのか?』という手本も示さずにそれで『育ててる』なんて、よく言えるものだと感じる。


山仁やまひとさんも、イチコさんと大希ひろきくんに対してずっと手本を示してきた。だからこそ、躓いた大希くんのことも、


『自分で何とかしろ!』


とは言わずに、彼と一緒にどう乗り越えていけばいいのかを考えてくれてるんだと思う。自分の中でどう処理していいのか分からないもやもやを『力比べ』という形でぶつけてきてきてくれてる大希くんを、真っ向から受け止めてくれてるんだ。



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