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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四十二 役童編 「仮想配信者」

一月二十九日。土曜日。晴れ。




今日、沙奈子は、玲那に付き添われて、千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんと一緒に水族館に行く。大希ひろきくんのことは気になりつつも、沙奈子にとっては必要な『ルーチン作業』だから。これをしっかりと行ってるから、『SANA』のドレスは人気を維持できてるんだろうな。山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーでも、好評を博してるそうだ。


最近は、ギャラリーの方とも、ビデオ通話での打ち合わせが主になってる。品物については宅配という形で届けて。実際に顔を出せないのは残念だけど、ギャラリーの方も、予約制で、一日数組という形で運営してるって。


その分、『バーチャルギャラリー』という形で、ネット上でギャラリーを展開してる上に、動画配信サイトで、山下典膳やまもとてんぜんさんの人形を3DCGモデルにしてそれを生身の人間に連動させてまるで生きた人間のようにリアルタイムで受け答えができるチャンネルを開設し、そちらも、世間一般で大きく話題になるわけじゃないけど、一部では人気を博してるって。


これは、ギャラリーの運営スタッフから出てきたアイデアだって。


「これも一種の『仮想配信者』ってやつですな。今や小学生とかの『なりたい職業ナンバーワン』とも言われてる」


玲那の説明に、僕は、


「そ…、そうなんだ……?」


正直、あまりピンとこないけど、『なるほどそういうのもあるんだ』とは思わされた。


「ピカんとこの会社もやってて、チャンネル登録者はもう世界で五百万人行ってるってさ。まあこれでも、トップ層に比べれば雑魚オブ雑魚らしいけど、まあ宣伝効果は十分って言ってた」


とも。


そういうことに対して嗅覚鋭く適切な対応が取れる人が、今は成功を掴むということなんだろうなと思わされる。


僕にはまったく縁のない才能だけど。


だからふと、


「大希くんもこういうの、アリなんじゃないかな?」


って口にしたものの、それに対しては、


「あ~…、大希くんはこういうの、向いてなさそう。かなり図太い性格でないと続けられないみたいだし……」


とのことで。


「ああ、確かにね……」


そんなこんながありつつ、沙奈子たちは水族館へ。大希くんは自宅でゆっくりしてるらしい。


本当に難しいな……。


それでも、今回のこと自体が、人生にはつきものの『躓き』なんだろうから、この経験を活かすのが大事だって気がする。


何もわざわざ試練を用意をする必要なんてない。何も問題のない人生を送れる人なんか滅多にいないんだから、何かが起こった時にそれを経験として活かせばいいんだ。



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