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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2031/2601

二千三十一 役童編 「じれったいけど」

一月十八日。火曜日。雪。




朝、今日も沙奈子を迎えに来たのは、千早ちはやちゃんと結人ゆうとくんだけだった。大希ひろきくんは、お父さんと一緒に別に登校する。


受験を控えたこの大変な時期に『七人殺しの役童』のことを打ち明けられた大希くんについては、山仁やまひとさんでしか支えられないだろうな。だって、すべての責任が山仁さんにあるんだから。


『七人殺しの役童の孫』になることが分かっててイチコさんや大希くんを迎えたことも、このタイミングで敢えてその事実を明かしたことも、山仁さんの決断だから。自分のその決断に責任を負う覚悟を、山仁さんは持ってる。


僕も、僕の子供として、玲那の妹として、玲緒奈れおなを迎えた。迎える決断をした。その事実から目を背けようとは思わないし、その責任から逃げようとも思わない。将来、玲緒奈が今回の大希くんみたいなことになったとしても、


『玲緒奈が勝手に拗ねてるだけだから!』


とか言って放っておくつもりなんかさらさらない。だから山仁さんが大希くんに徹底的に寄り添うことにしたんだとしても、その判断を支持する。


『甘やかしてる』


なんてことを言う無責任な赤の他人とか、関係ない。もしどこかの親が、自分の子供を叱り飛ばして殴り飛ばしてそれが上手くいったからって自分のやり方を押し付けようとしてきても、聞く耳は持たない。


だって、その人の子供と大希くんや玲緒奈は別人なんだよ?。別の人なんだから同じやり方で上手くいく保証なんてどこにもない。同じやり方で上手くいくんなら、どうして有名人が語る子育て論を実践しても同じ結果にならなかったりするの?。自分の子供全員を有名難関大学に入学させられたという人の真似をすれば、子供は全員、有名難関大学に入学できるの?。そこでもし、同じ結果にならなかったのを『子供自身の資質』の所為にするなら、やっぱり、子供はみんな別の人間で、それぞれ違うっていう何よりの証拠だよね?。


だから、大希くんを一番よく知ってる山仁さんが、大希くんのことをよく見ながら慎重に丁寧に対処するのが一番確実なんだと思う。普段は子供のことなんかロクに見てないのに、何かあった時だけ口出ししてくるような親とも違うからね。山仁さんは。


だけど同時に、山仁さんだって完璧じゃない。完璧じゃないから力が及ばない時もあるかもしれない。そういう時に、僕たちが力になろうと思うんだ。沙奈子のことですごくすごくお世話になったからね。


ただ今は、見守るしかない。じれったいけど、余計なことをするとかえって拗れるかもしれないし。



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