表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2026/2601

二千二十六 役童編 「私のケーキ屋でこき使って」

一月十三日。木曜日。晴れ。




昨日の大希ひろきくんの件は、


「僕だけ何もやりたいことが見付からなくて、何をしたらいいのか考えてたら、僕なんかいなくてもいいんじゃないかって気になってきて……」


ということだったそうだ。だから、


『このままどこかにいなくなってしまおう』


って考えて、当てもなく歩き回ってて。でも歩いてるうちに思い直して家に帰ろうと考えたそうで。


そして今日は、千早ちはやちゃんじゃなく、山仁やまひとさんと一緒に家を出て、学校まで送ってもらって……。


「大希くん、どうしたんでしょう……?」


ウォール・リビング内で玲緒奈れおなが遊んでる中で仕事をしながら、絵里奈が口にする。


「そうだね。あんなに沙奈子たちと楽しそうにしてたと思ったのに……」


僕もそう応えながらも、でも、『僕だけ何もやりたいことが見付からなくて』という言葉には、僕自身、心当たりがあった。僕も、『何もやりたいことがなかった』から。


ううん、『こんな家から早く出たい』っていうのが『やりたいこと』だと言えるなら、それがやりたいことだったのかもしれない。けれど、それ以外には具体的にやりたいこともなりたいものもなかったんだ。だから実際に家から出られたら、それこそ何もやりたいことがなくなってしまって、呆然となった。正直、


『このまま消えてなくなれたら楽になれるのに……』


とも思ってた。もしかするとあの時の僕と同じ心理状態なのかもしれない。


確かに大希くんは間違いなく山仁さんに愛されてて、僕みたいに『早くこんな家から出て行きたい』って思いもないんだろうなって思う。しかも彼の場合は、星谷ひかりたにさんという、実の父親の山仁さんに勝るとも劣らない大変な愛情を抱いてくれてる人もいる。


それでも、沙奈子も千早ちゃんもすごく具体的に『やりたいこと』があって、結人ゆうとくんにもおぼろげながらそれが見付かりそうになってて、なのに大希くんだけはそういうのがなくて。というのがストレスになってる気はするかな。


理屈じゃないんだ。たぶん、具体的な目標みたいなものを自分だけが見付けられてないっていう不安感が、思春期にありがちな不安定さと、あまりよくない意味で噛み合ってしまって、情緒不安定になってしまった可能性はある気がするんだ。


学校が終わって、沙奈子と一緒にうちに帰ってきた時、いつものようにビデオ通話を繋いで、でもインカムで会話だけを聞いてみる。


千早ちゃんは、


「やりたいことがないって、何言ってんだよ!。そんなのなくたって私のケーキ屋でこき使ってやるから心配すんな!」


って言ってくれてたけど、正直、


『それじゃダメかもしれない……』


と思ってしまったんだ。


そういうことじゃない。って……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ