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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2016/2601

二千十六 玲緒奈編 「ただの凡人なんだって思い知る」

一月三日。月曜日。曇り。




星谷ひかりたにさんは、『SANA』以外にも会社を興してて、それらの中には、もうすでに大きな利益を上げてるものもあるらしい。外国企業と商品の共同開発を行って、それが実際に海外で発売されて、その利益が入ってきてるそうだ。加えて彼女が持ってる株資産が大変なことに。


だから彼女にとって『SANA』は、決して大きな利益を生む会社じゃないって。


ただ、


「確かに私にとっては、利益の面では大きなメリットを生む企業じゃないでしょう。ですが、私の『初心』が『SANA』にはあるんです。だから疎かにはできません。それに、そんなことをしたら千早ちはやとヒロ坊くんに叱られてしまいますから」


とのことだった。


いったい、彼女の頭の中はどんな風になってるんだろう?。沙奈子も千早ちゃんも大希くんも勉強は間違いなくできるんだけど、とても星谷さんと同じことができる印象はない。あくまで僕たちの日常の延長線上にしかないんだ。なのに星谷さんだけは僕たちの日常とはまったく繋がってない気がする。


どうしてそんな人と知り合えたんだろう……?。


だけどそんな星谷さんも、確かに僕たちと同じ人間なんだよね。たぶん……。


でも、それを気にしても仕方ない。星谷さんは星谷さん。僕たちは僕たちだ。自分にできることを淡々としていくしかない。そんなとんでもない人と比べたって何にも参考にならないし。


それよりも、僕たち自身が幸せになることが大事だ。ううん、今でも僕は十分に幸せなんだけど、僕の幸せと沙奈子や玲緒奈の幸せは必ずしも同じとは限らないから。


そんな沙奈子は、星谷さんからもらったお年玉も、しっかりと貯金してた。ドールのドレスのも含めると、沙奈子の貯金の額も、もう二百万円を超えてしまった。水族館に行った時にぬいぐるみを買ったりしてそこそこ使ってるらしいんだけどな。


ああそうか。それを考えたら、星谷さんほどじゃ全くないけど、星谷さんは次元が三つくらい違いそうだけど、沙奈子だってすごいんだ。沙奈子が作ってるものが売れて、そして『お金』という形になって手元に残ってる。沙奈子はもう、それだけのことができるようになってるんだよ。


すごいな……。本当にすごい……。沙奈子に比べたら僕なんて、それこそ何もできてない。仕事で大きな功績を残したわけでもないし、給料だって『社会のお荷物』って言われる程度のそれだ。ただの凡人なんだって思い知る。


でも、別にそれを恥ずかしいとも思わない。僕自身は凡人で構わない。何か特別な功績を残せた人しか価値がないんなら、この世には価値のない人がほとんどだと思う。


だけどそれが本当なら、ほとんどの『親』なんて、何の価値もないよね?。敬う価値さえないってことになるんじゃないのかな。


不思議だよね。



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