二千十五 玲緒奈編 「お年玉もらった……」
一月二日。日曜日。晴れ。
新年二日目。今日は絵里奈も一緒になって一階の厨房でお雑煮を作ってくれた。だけど、玲緒奈が食べたがると困るので、僕は玲緒奈と一緒に二階に残って、絵里奈と沙奈子と玲那と千早ちゃんと大希くんと結人くんとイチコさんと波多野さんと田上さんが、一階でお雑煮を食べてた。そこに遅れて星谷さんも来て、
「あけましておめでとうございます」
と玄関で丁寧に挨拶してくれたのが聞こえてくる。
僕と玲緒奈だけが二階に残ってることをあれこれ言う人もいるかもしれないけど、僕は別に何とも思わないんだ。自分が蔑ろにされてるわけじゃない実感があるからね。その上で、こうした方が合理的だからそうしてるんだ。そして玲緒奈のお昼が終わったところに絵里奈が戻ってきて、今度は僕が一階に下りて、みんなと一緒にお雑煮を食べる。
これも、僕と絵里奈は玲緒奈の親だから。玲緒奈に合わせるのは当然なんだよ。僕たちの勝手で玲緒奈に来てもらった事実がある以上は。それに、こうやって合わせなきゃいけないのも今だけだからね。何年かして、完全に同じものを食べられるようになれば、みんなで一緒に食べたらいい。『こういう時期がある』というのも分かってて玲緒奈に来てもらった。だからそうする。何もおかしいことじゃない。
それに、僕が一階に下りると、沙奈子が僕のお雑煮を用意してくれた。そこに、
「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
星谷さんが丁寧に挨拶してくれた。久しぶりに直接会った彼女は、さらに大人びた印象になった気がする。しかも間違いなく綺麗になった。お雑煮を食べ終えてマスクを着けるのが惜しいと思えるくらいには。
「お父さん、星谷さんからお年玉もらった……」
沙奈子が言うので、
「ああ、すいません!。ありがとうございます……!」
実は僕たちの間では、お年玉は基本的になしってことになってた。だって、まだ子供のいない星谷さんやイチコさんや波多野さんや田上さんからもらうとなると一方的にってことになってしまうし、星谷さんたちがまだ未成年だった時にも、僕たちの負担が大きくなるからということで勘弁してもらってたしね。
だけど星谷さんは、
「これは私がそうしたいと思ってしていることです。お気遣いは無用です」
きっぱりとそう言ってくれたんだ。まあ、星谷さんはもうこの時点で大変な資産家になってたそうだけどね。




