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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1959/2601

千九百五十九 玲緒奈編 「なんの免罪符にもならない」

十一月七日。日曜日。晴れ。




『親の所為にするな』


『他人の所為にするな』


『社会の所為にするな』


つくづく、それを声高に叫ぶ人ほど実は『自分以外の誰かの所為』にしてるとすごく感じる。自分が誰かを口汚く罵る行為を、


『言われる原因を作った方が悪い!』


と、『相手の所為』にしてるからね。自分はそうやって『自分以外の誰かの所為』にするのに、他者には『自分以外の誰かの所為』にすることを許さないんだ。


酷い矛盾だよ。


僕はそれを沙奈子や玲緒奈れおなに分かってもらいたいと思ってる。そのための努力を続ける。


自分の子供から信頼される人間でいる努力もせずに子供からの反発を招いて、なのに自分は『親として努力してるのになぜ!?』とか泣き言を並べるばかりで、そして子供が成長することで『親だって完璧な人間じゃない』ってことに気付いてくれてそれで『親の気持ちが分かった』って考えるようになってもらって、それで子供の方から歩み寄ってもらって和解に至る。


よく考えてみてほしい。そんな親の振る舞いは、『他力本願』じゃないの?。自分は子供からの信頼を得る努力はせずに子供が成長して自分を理解してくれるのを待って、しかも子供の方から歩み寄ってくれるのを待って、子供の方から許してもらうのを期待してるだけだよ?。徹頭徹尾、『子供の側が自分の期待通りに動いてくれるのをただ待ってるだけ』だよ?。


僕は、玲緒奈を自分の勝手でこの世に送り出したんだ。だから『玲緒奈を養育する義務』があるだけで、その義務を果たしたことは努力なんて言えるようなものじゃないとしか思わないし、ましてや恩を売れるなんて思わない。


それなのに、『信頼を得る努力をしない』『自分の思い通りにならないことに泣き言を並べるだけ』『子供が自分を理解してくれることを一方的に期待する』『子供の方から歩み寄ってくれるのをただ待っている』『子供の方から和解を持ちかけてくれることを期待してる』なんて、ムシが良すぎないかな。


少なくとも僕はそんな親でいたいとは思わないよ。


『原因を作った方が悪い!』っていう理屈が正しいなら、子供からの信頼を得られないような振る舞いをしていた親の方が一方的に悪いはずだけどな。


『子供を養育してる』ことは、なんの免罪符にもならない。それはあくまで、


『子供の承諾もなく勝手にこの世に送り出した親自身の後始末を自らしてるだけ』


でしかないからね。世の中には、その後始末さえせずに逃げる親もいるそうだけど。


別にそれを責めたいわけじゃない。僕が直接被害を受けたわけじゃないから。そんな親にはなりたくないっていうだけだ。



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