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第201話 祭りのあと①


 文化祭の翌日は振替休日で授業は休みだ。楽しかった反面、終わると疲れがどっと現れて、目を覚ましたのは昼過ぎだった。


 当然だけど両親は仕事、梨子は学校に行っているので家には俺一人。普段ならば学校に行っている時間にこうして起きるのは何だかとってもいい気分。


 キッチン周りを確認したが俺の昼ご飯は用意されていなかった。リビングに『なんか適当に食べといて』と五千円置かれていた。

 多分、今日の夜に打ち上げに行くことを話したのでその費用も含めてだろう。こういうときはしっかり太っ腹なうちの母である。


 時計を見ると午後の二時を回っている。お昼ご飯というには少し遅いが、食べないとさすがに空腹に耐えられそうにない。


 打ち上げの集合は午後五時なので、軽く何か食べてそのまま向かうか。


 と、今日の方針が決まったところで自室に戻り服を着替える。

 特別おしゃれな服は持ち合わせていないけど、ダサくはない格好にしようと心掛けた。多分、普通くらいの見た目にはなるだろう。


 奇抜なものはいらない。

 シンプルイズベスト。

 ということで、みんな大好き黒のスキニーパンツに白のシャツ、それから黒のパーカーを羽織り家を出る。


 どこに行っても良かったのだけど、どうせなら平日のイオンモールというものを体験してみよう。普段拝むことはできないからな。


 そのまま電車で打ち上げに向かうので自転車は使わず、えっちらおっちら歩いて向かう。

 それでも二十五分ほど歩けば到着する。


「……」


 スマホを手にする。


 陽菜乃は今、なにをしてるだろうか。


 一緒に打ち上げ場所に行きませんか、みたいな感じで誘ったら来てくれるかな。


 なんてことを考えながら、むうと唸る。



 *



「おねーちゃん、だらだらー?」


「んー」


 わたし、日向坂陽菜乃は昨日までの疲れに押し負けて昼まで寝てしまっていた。


 ようやく重たい体を起こしたものの、どうにもやる気が出ずにリビングのソファに寝転がる。


「お昼は?」


「食べるー。けど、もうちょっとだけ」


 寝起きはどうにも食欲がない。

 もう少しだけゆっくりしてからでもいいよね。今日の予定は夕方からだし。


 二日続いた文化祭の振替休日。今日はその打ち上げが夜にある。それまではまだ時間があるので焦ることもないよね。


「おねーちゃん、でんわぶるぶるしてるよ」


「んー?」


 テーブルの上に置いていたスマホをななが持ってくる。そうは言うけどスマホは全然震えていない。

 メールとかラインとか、そういうのだろう。


 梓とかかな。

 今日の夜のことでなにか言ってきているのかもしれない、と思い、わたしはななからスマホを受け取る。


「……っ」

 

 わたしはバッと体を起こす。

 その突然の動きに近くにいたななも、キッチンにいるお母さんもビクッと驚いた。


「お母さん」


「なに?」


「やっぱりすぐお昼食べる」


「そう。急にどうしたの?」


 戸惑いの声を漏らすお母さんだけど、今はゆっくり説明をしている場合ではない。


「別になんでもなーい」


 ててて、と自分の部屋に急いで戻る。とにかく準備しないと。

 着替えて、お化粧もしないと。ああ、寝癖もついてる。なんでもっと早く起きておかなかったんだろう。


「……あの慌て方は例のシマくん関係ね」


 ……全部バレてる。



 *



『わたしも暇してたから合流するね! ちょっとだけ待ってて!』


 陽菜乃に『よかったら一緒に打ち上げ行かないか?』とラインを送ったところ、『うん! だいじょうぶだよ!』と来て、今何してるのかの話になりイオンモールで時間つぶしてると伝えたところこんな返事がきた。


 ハンバーガーのセットを頼んだ俺は適当に空いている席を見つけて座る。

 平日のフードコートってもっとガラッとしているものかと思っていたけど、想像よりは人がいる。


 まあ、想像していたのがガラガラだっただけで、全然混雑とかはしてないんだけど。


 バーガーにかぶりつく。

 俺はハンバーガーのセットを頼んだときにはまずバーガーを食べて、そのあとにサイドメニューであるポテトやナゲットを食べる。

 これが当たり前だと思っていたけど、人によって違うことを最近知った。


 ハンバーガーを食べ終え、ポテトをちまちまつまみながらスマホをいじる。


 俺はあんまりソシャゲはやらないしスマホをいじるといってもあんまりすることはない。SNSもずっと見るとかはないしな。


 電子書籍で買った小説を読んだりもするけど、やっぱり本は紙で読みたいなあってなって終わる。


 そんな俺の最近の暇つぶしは写真を見返すことだ。こんなことあったなあと懐かしい気持ちになりつつ、変わりゆく自分の生活を実感するのだ。


 まあ、懐かしいと言ってもここ半年くらいの写真しかないんだけど。


 そんな感じで暫し時間を潰していると、ピコンと通知が届く。


『どこにいる?』


 陽菜乃からだった。

 俺は未だに慣れない手付きで返事を書いて彼女に送った。



 *



『フードコートでご飯食べてた。急がなくていいよ』


 隆之くんはフードコートか。

 わたしはそちらに向かおうとしたけど、ハッとしてトイレに向かう。

 鏡の中の自分とにらめっこしながら乱れた髪を整える。変なところがないかを確認してからトイレを出る。


 到着して汗びっしょりも嫌なので、とてとてとやや早足でフードコートへ向かう。


 それにしても、とわたしは周りに視線を向ける。


 平日のイオンモールってこんな感じなんだな。

 来るのはだいたい休みの日か、それか放課後の時間だからいつもはもうちょっと混んでる。


 少しさみしいような。

 でもちょっぴり優越感。


 なんてことを思いながら、二階にあるフードコートに到着する。きょろきょろと見渡してみると、少し離れたところに隆之くんの背中を見つける。


 こっちにはまだ気づいていないっぽい。

 だからわたしはゆっくり気配を消しながらそろりそろりと近づいていく。


 あと数歩のところまで来たけれど、隆之くんはこちらに気づく気配はない。


 さて、どうしよう。


 だーれだ、はこの前しちゃったし。

 シンプルに後ろから「わっ」って声をかけようか。でもそれは周りの人に迷惑がかかっちゃうよね。


 考えること十秒。



 *



 陽菜乃から到着したと連絡が来てから少し経つ。別に急いでいることはないのでいいんだけど。

 フードコートにそこまで人はいないし、ここまで来れば見つけることは難しくないはず。


 ここは陽菜乃もよく利用する場所だからフードコートまで迷うこともないだろう。


 もしかしたらもうフードコートにはついているけど、俺の姿を見つけられないとか。

 俺が気づいていないだけで後ろ側にはめちゃくちゃ人がいるとか。


 だとしたら俺のほうが探してあげないと。


 そう思ったときだった。


 とんとん、と。


 肩を叩かれる。

 ちょうど振り返るところだったので、勢いそのままに俺は後ろを向いた。



 ふにっ。



 人差し指が頰をつつく。


「おまたせ、隆之くん」


 そう言った陽菜乃が、にへっとしてやったと言わんばかりの笑顔を浮かべた。


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