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コロンペンギン

 そんな感じの日々を四日過ごした。

 シャロさんが肉屋の店主に物置で俺を寝かせたりせずに家で寝かせてあげたらどうだろうかと提案していたのを聞いて丁重にお断りした。

 さすがにそこまでお言葉に甘えきれない。

 真心だけ受け取り、物置での就寝ライフを楽しむ。


「えー……と、長く滞在するのでしたら本格的にお部屋を用意しますからね」


 などと催促のお言葉を最後にもらいました。

 せめて宿代とばかりにお金を渡せるようにがんばるか、早めに自立出来るようにしたい。

 

 近隣調査は……安全そうな地域は大体回った感じだ。

 やはり安全故に遭遇する魔物も弱い。

 大分金と生活必需品が集まってきたので、そろそろ装備品とかに手を出すか考えている。


 武器は欲しいが……微妙にまだ早い。

 やっぱり契約用のカードを買った方が良いか。

 冒険者からしたら安めだろう。

 それでも俺からしたら高いように感じる。

 ここ数日の稼ぎがパアだ。

 一番安いので銀貨10枚もする。節約してやっと買えた品だ。


「明日は村主催の漁が始まるかー……」


 約一週間近く村にいると、さすがに顔なじみになってきた。

 村の人達も俺に対して余所者って雰囲気が大分緩和されてきている。

 お金が無い商人って認識っぽい。

 役場の人も極力自力で解決したがる人だって認識みたいだし。


 あ、盗賊に襲われたって報告はそれとなくしておいた。

 タイミング良く近くに出没した盗賊を冒険者が倒したって話が出ていたので便乗させてもらった。

 じゃあ盗られた品を報告してくれと言われたけど、隷属していた魔物を殺され、積み荷はもう処分されたんだろうと肩を落とす演技で乗り切った。

 そこまでした所で役場の人も察してくれて、踏み込まずにいてくれた。

 ここで金まで援助してくれる程、仲は良くないし、義理も無い。

 商人組合に所属していなかったモグリの商人志望じゃこんなもんだろと思われたようだ。


 さて、漁に参加するのも悪くない。

 次の行動が失敗したら是非ともやろう。


「さてと」


 夕方、おお、もう月が顔を出して居やがる。

 太陽が沈むまで待てって。

 俺は契約用のカードを持ちながら海岸沿いを歩いていた。

 すると俺の接近を察して、親しげにコロンペンギンの一羽が近寄って来る。


 それに対して若干威嚇的な態度を見せて引き止めようとする一羽と、その一羽を止めようとしている少し大きめの一羽……。

 この二羽は俺と仲がいいコロンペンギンよりも大きい。

 十分に成長して……既にガラコロンペンギンだな。

 結局は俺の方へ来るコロンペンギンに遠巻きに威嚇するだけで一羽……なんかメスっぽい奴は、少し大きめの奴に慰められる様に離れて行く。俺、余計な事してる?


 このコロンペンギンの親……じゃないよな、アレ。

 親しげなコロンペンギンは遠い目をしている様に見えた。

 というか……コイツ、いつもコロニーの端の方にいる。

 一羽で川を上っている時もあるし。

 俺に会うために来た訳じゃないのは二日目辺りでわかっていた。

 どうもコロニー内の序列的に低い立場にいるようだ。


 で、ガラコロンペンギンの方はボスの近くに高頻度でいる。

 体格も良さそうだし期待されているとかだろうか?

 近々更に変化するのは一目でわかるな。

 昨日はコロニーがもぬけのからで海の方で泳いでいるのを目撃した。


 揃って漁をしているっぽいのを遠くで確認し、夕方頃に海岸で釣りをしていたら、クタクタって様子のコイツが俺に魚をもらいに来たんだ。

 どうも狩りが下手っぽい。

 もしくは、序列の所為で採った魚を取られたって所か。

 雌っぽい奴から魚をもらっていた様だけど……成長中で腹が減っているって所かな?

 俺から餌をもらっているからハブられているって訳ではないようだ。


 聞いた話だと村の漁師の一部はあのボスペンギンであるガラコロンキングペンギンと契約しているらしい。

 なので下手に生け捕りと言うか、大事な配下であるコロンペンギンを怪我させようものなら、漁師辺りにクレームが入った可能性がある。

 共生関係だった訳だ。

 ちなみに魔物側から攻撃してきて、それを返り討ちにした場合はその限りじゃない。


 今日も釣った魚をコロンペンギンに与える。

 最近では警戒心が消え失せているのか、俺から手渡しで受け取るにまで信用される間柄になっている。

 俺の隣でコロンペンギンが座って、魚を食べている姿は異世界独自の体験だろう。


「なあ」

「キュ?」


 言葉も理解されているっぽいし。

 俺は懐から契約用のカードをコロンペンギンに見せる。

 そして僅かにカードを強く握って何がしたいのかをコロンペンギンに諭させる。


「キュ!?」


 ビクーンとコロンペンギンが垂直に立ち上がってフリッパーを振って自己主張を始めた。


「これが何かわかるか?」


 コクリとコロンペンギンは頷く。


「うん。俺はお前に契約を申し込みたい。行いは個人契約」


 契約にはいろんな種類が存在する。

 村の漁師がガラコロンキングペンギンと行っているのは集団契約。

 ガラコロンキングペンギンと複数の漁師が契約を行う物だ。


 この場合、漁師は契約相手である代表のガラコロンキングペンギンから力を供給してもらえる。

 その分、力の供給が分散してしまうはずなのだが、漁師同士が近くにいる事で力の共有が大きく働いて、効率的に力を発揮できるらしい。

 連携の意味もあって悪い方法じゃない。

 その代価として得られる経験値等の一部をそれぞれから総取りでガラコロンキングペンギンは得られるって訳だ。


 で、俺が行うのは個人契約。

 これは個人であるコロンペンギンと専属で契約を行い、力を供給してもらう。

 契約内容等の条件は色々とあるけれど、それも後で説明する。

 個人契約は相手の力をダイレクトに反映出来る。


 もちろん、相応に人間側の能力が高くないと引き出し切れないけど、今の俺はLv1以下なんだから文句なんて言っていられない。

 むしろ個人契約の方がメジャーだ。

 集団契約なんてしている時点で、あのガラコロンキングペンギンが相当な強さを得ているのは確かだろう。


 村の漁師に事前に確認した話だと、コロンペンギン相手に個人契約をしても特にガラコロンキングペンギンは干渉してくる事は無いそうだ。

 今回は大丈夫だが、場合によってはボスに強さを見せてからじゃないと契約不可って事例もあるとか既視感が教えてくれる。


「キュウ……」


 自分で良いのか? ってフリッパーを合わせる様なポーズで俺に視線を向けてくる。

 コロニーには他にも優秀な奴がいるんだろう。

 ガラコロンペンギンの上位である魔物だって色々と居る。

 まだこのコロンペンギンはスタート地点にすら立っていない。

 これは俺と同じだな。


「ああ、そりゃあ明日の漁に合わせてお前等のボスと契約するのも悪い話じゃないとは思うけどさ」


 漁師の連中も村に住み着いた俺が契約しても文句は言わないだろう。

 と言うかー……確か有料で契約できたはず。

 村の方も管理がしやすくなる。

 俺に問題行動があったらガラコロンキングペンギンに頼んで契約を破棄させれば良い。

 そうなって困るのは俺だけど、リターンもそれなりにある。

 目の前のコロンペンギンと契約するよりもしばらくの間、恩恵は大きいだろう。


「知らない関係じゃなくなってきたし、仲良くなってきた奴とした方が俺も嬉しいんだよ」


 ポンとコロンペンギンのフリッパーに手を載せる。

 契約は取引だ。

 代表的な要素として、人間側に与えられる恩恵はLv等の要素と様々な効果。

 魔物側に与えられる恩威は人間が稼いだ経験値等の一部、手に入れた素材の提供等、契約次第だがメリットが多くある。


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― 新着の感想 ―
気になる点  最近では警戒心が消え失せているのか、俺から手渡しで受け取るにまで信用される間柄になっている。 →受け取るまでに コロンちゃんかわいい
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