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スネークソード

「シャロさん、助かったよ」

「お礼を言う前に今は、目の前の相手に集中をしてください!」

「ああ!」

「邪魔をしやがって! 可愛いからって調子に乗ってるんじゃねえぞ! コラァ!」


 マリウスが邪魔をされて激高した様な声を出しながら乱暴に剣を振りかぶって来る。

 Lvによる早さに俺はシャロさんを守る様に前に立って、槍をマリウスの剣に当てる。

 火花が散るけど、マリウスの攻撃を完全に殺しきれない。


「おらぁ!」


 マリウスが剣を大きく振りかぶって俺の脳天目掛けて振りおろそうと一歩踏み出したその時。


「よっと」


 咄嗟にマリウスが一歩踏み出しそうな所にアイテムボックスからロードキャタピラーの死体を出す。


「うお!? まだまだ!」


 転び掛けつつ死体を踏み抜いてマリウスは俺を切り伏せようと飛びだしたが……。


「ここです!」


 シャロさんも負けじとダリアマジックパープルスパイダーの糸玉を投げつけて絡みつかせる。

 しっかりと処理しないとべたつくんだよね。


「またか! いい加減にしやがれ!」


 それはこちらの台詞だな。

 素早くステップからのアクセルスナイプでマリウスの胴を貫く勢いで突く。

 が、ガツンと、マリウスの鎧に止められる。

 それでも勢いを殺すことなく、強く地面を踏みつけて押し出した。


「うお!?」


 マリウスは驚きの声を上げながら尻もちを突く。

 この隙を逃すか!


「バッシュ!」

「パルスショック!」


 俺とシャロさんの連携攻撃がマリウスに向かって命中する。


「いってぇ……てめえら! 調子に乗りやがって! うおおおおおおおおおおおお!」


 マリウスが糸を引きちぎりつつ、全身に風の膜を発生させて糸を切り裂いた。

 トルネードシールド……だろうと既視感が告げる。

 契約した魔物の中で、一番早くこの魔法が使えるのは最低Lv35からだったはずだ。

 マリウスの契約魔物がどれくらいの協力をしているか分からないけれど、少なくとも自身よりも下の相手と契約する様には思えない。

 つまりマリウスのLvは35以上。

 俺のLvの倍以上ある。


「もう許さねえぞ! 野郎を殺して、シャロは説得して仲間にしてやろうと思ったけど、一緒にぶち殺してやらぁ!」


 乱暴な言葉遣いで完全に正体を露わしたマリウスの振りをしている奴は剣を構えてスキルを放ってくる。

 早い!?

 風系の補助魔法も一緒に展開したのか、加速しながら俺に向かって切りつけてきた。


「疾風剣、竜巻切り!」


 風が俺の周りに発生し、幾重にも分身したかのようにマリウスが俺を中心として現れて切りつけて来る。


「ぐうううううう」


 全身が切り刻まれる様な感覚と共に装備していた鎧がズタズタに引き裂かれて行く。

 次の瞬間、浮遊感と共に俺は空高く跳ね飛ばされていた。


「次はお前だ!」


 滞空中の俺を無視してシャロさんにマリウスの振りをした奴は剣を向けて駆け出す。


「ハイ……ファイアバレット!」


 シャロさんがロッドに力を込めて魔法をマリウスに放ちながら俺を助ける為に視線を向けているのが分かる。


「くっそ……妙に魔力が高い攻撃してきやがるな! だが――この程度! お前等Lv十代の連中が高Lvの俺に勝とうなんて無謀にも程があるんだよ!」


 だがマリウスはシャロさんの魔法を切り裂いてシャロさんの胸倉を掴んで風を纏った剣で衣服を切り裂く。


「おー……顔も良いけど体形も良いじゃねえか! ますます惜しいが……ま、しょうがねえよな」


 ドサッとそこで俺は頭から地面に着地し、全身の痛みに悶える。


 ――おい……ここで死んだ振りをすれば、生き延びられるかもしれないぜ?


 心の何処かでそんな声が聞こえて来る。


 ――強い奴なんかと戦う事なんかせずに、今まで通りコツコツと強くなれば良いじゃねえか。

 ――そいつよりも強くなってから、雑魚を仕留めるように戦えば良いんだよ。

 ――だから今は……シャロを見捨てて、その悲しさをバネにして強くなる様に努力すれば良い。


 その甘い囁きと全身の痛みに、意志が揺らいで行く。

 そんな所で、リリカさんが動けずにその場で蹲る様にして涙を流している姿が俺の視界に捕える。


「もう……やめて、マリウス……うう……お願い。こんなの……」


 ああ……エクスチェンジで行われる悲劇とはこんなにも……残酷な代物なのか。

 ある日、愛していた恋人がまったくの別人に成り変わられる。

 本当の俺の仲間達も今は……同じ状況に陥っているのはここで証明されている様な物だ。


 ……死んだふりで生き延びる?


 違う、そうじゃない。

 俺は心の声に……中藤洋としての部分に言い聞かせる。

 そんなんじゃ、今を……シャロさんを、リリカさん、ミトラやシェルテス、カークラット……マリウス自身を救えない!


 俺は……何の為にこの世界に来て、今までを過ごして来たんだよ!

 相手によって出したりひっこめたりする様な決意なんて、決意じゃない!

 なるほど、こう言った連中がエクスチェンジで他者の人生を剥奪するのか。

 そんな臆病者で卑怯者に、やられたままであって溜まるか!


「いや! 放しなさい! ファイア――むぐ」

「おっと、余計な事をされちゃたままったもんじゃねえな。サイレントアイ」


 僅かな時間、相手を沈黙させるスキル攻撃!?

 シャロさんなら即座に解けるとは思うけど、その間に体を縛られ、やりたい放題にされてしまう。


「――!」

「そうそう、後はひ弱な奴は縛り上げ……へへへ、お楽しみをしてから後処理をすれば良いよな」


 マリウスが本来出来ない様な下品な顔をして、そいつはシャロさんの髪の匂いを嗅ぎ始める。


「後は記憶を――」

「待て……」


 全身の力を振り絞って立ちあがる。

 体中が悲鳴を上げているが知った事か!

 ここで立たなくて何が男だ。

 奪われた自分を返して貰うだ!

 俺は、俺である為に、例え殺されるとしても一歩も引かない。


 キーン……と、そこで音が響く。


 シャロさんと一緒に見つけた欠片が……カードとなって剣と一緒に俺の目の前に浮かび上がる。

 それは……この世界に来た日の夢で見た物と同じ物だった。


 ??? Lv??? ???%

 特性 秘められし力 ??????

 技能 ウェポンバースト ?????


 ドクンドクン……体中から血が出て、それでも……魂から鼓動が響き渡る。

 本能的に分かる。


 この力は、今の俺では釣り合わない程の強靭な代物。

 あまりにも高すぎるLv差でどんな力が内包されているのか理解に及ばない。

 使用したらどんな代償を支払うか分からない。

 それでも、今の俺では……みんなを救えない。


 なら……俺の知る人達を助ける為に、どんな代償だって支払ってみせる!

 目の前のカードに契約を切りかえる。

 ズシンと全身が内側から弾けそうな程の痛みが響いて、血がドクドクと吹き出して行く。


 ヘルロードスピアがひとりでに浮かび上がり、剣と重なって形状が変化していく。

 俺は不思議と手に吸い付く剣を手に持って構える。


「あ? なんだ? まだ殺しきれなかったか。しぶとい奴だなぁ……」


 ドンとマリウスに成り変わった奴はシャロさんを縛り上げて突き飛ばし、俺に向かって余裕を見せながら風を纏って突撃してくる。


「これでトドメだ! 派手に散りやがれ!」

「……遅い」


 今の俺からすればマリウスに成り変わった奴の纏う風の全ての境界線さえ見切る事が出来る。

 その攻撃を避け、背後に回り込んで剣でマリウスに成り変わった奴の腿を突く。


「ギャアアアアアアアアアアア!?」


 ジュッと剣に魔力を流し込んで発火機能を活発化させて腿を焼く。


「てめえ!」


 痛みを振り切って、俺に剣を振りかぶるマリウスに成り変わった奴の攻撃を、剣を引き抜いて距離を取る。


「傷の所為で動きが緩慢になるな」


 距離を取って大きく振り降ろす。


「は? 素振りでもしてんの――」


 馬鹿にする声は途中で遮られる。

 剣が一本の紐、蛇腹になって伸びてマリウスの肩を切り裂いたからだ。


 ヘルロードスネークソード 付与効果 炎熱 意志伝達 可変


 これが……不思議な剣と一つに成ったヘルロードスピアの能力だ。

 縦に降ろした軌道から横薙ぎを行いつつ収縮させて剣形態に戻す。

 思いのままに剣が動いてくれる……不思議な感覚だ。


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― 新着の感想 ―
気になる点  マリウスが邪魔をされて激高した様な声を出しながら乱暴に剣を振りかぶって来る。 →激昂
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